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千載一遇のチャンスが大ピンチになった日(新穂高温泉~鏡平山荘) [登山]

8月17日に始まった当局の検査がなかなか終わらない。当初は早ければ9月22日、遅くとも9月末には終了すると思われていたのであるが、10月になっても継続することが確定した。この調子だと、10月14日頃まで続くような雰囲気だが、それは非常にマズイ。

検査が終わればすぐに1週間の休暇を取って北アルプスに向かうつもりであったのだが、10月中旬になってしまうと、ほとんどの山小屋は閉まってしまうし、北アルプスの高所では、そろそろ雪も降り出す頃になってしまう。

ところが、天の助けか悪魔の罠か、9月30日(金)と10月3日(月)の二日は、半期決算の会社に配慮して、検査官たちが会社に来ない事が突如として発表された。

チャーンス!!

この2日に有給休暇を取れば、3泊4日の予定で北アルプスに行けるではないか。ダメもとで有給休暇の申請を出すと、これまでの頑張りが認められたのか、意外にもあっさり許可が下りた。そりゃそうだ、毎朝2時間のウォーキングの時間すら検査対応のために捧げてきたのだ。1日だけストレス解消のために鹿島槍ヶ岳に向かったが(あえなく敗退)、バドミントンだって2ヶ月間近く全く練習していない。

そこで、大急ぎで北アルプス行きのプランを考えたのであるが、新穂高温泉から入って、鷲羽岳、水晶岳、黒部五郎岳という3つの百名山を荒稼ぎしつつ、雲ノ平をのんびり散策するという計画を立てた。体力がある時なら薬師岳まで足を伸ばしたいところであるが、今の状態では無理はできないと考えた。

天気予報はあまり良くない事を告げていたが、天候を選んでこの千載一遇のチャンスを逃すことはできない。8月27日(土)に槍ヶ岳へ登頂した時のように、奇跡的に天気が回復することだってあるかもしれない。ところが、この日も例によってピンチに見舞われ敗退を余儀なくされたmakiwarikunであった。

果たしてこの日のピンチとは?やっぱり例のアレなのか?

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

日程:2011年9月30日(金) (日帰り)
天候:雨[雨]

コースタイム:
6:39 新穂高温泉登山者無料駐車場 →8:05 わさび平小屋(5分休憩) →8:26 小池新道入口 →9:12 秩父沢→10:18 シシドウが原(5分休憩)→11:00 鏡平山荘(15分休憩)→14:46 新穂高温泉登山者無料駐車場

直線距離:22.143km
沿面距離:22.643km
累積標高(+):1812m
累積標高(-):1803m
所要時間:8時間07分



鏡平グラフ.jpg
GPSデータグラフ表示


1時前に自宅を出て、新穂高温泉に着いたのが6時半。天気の悪い平日だというのに、広い駐車場の8割程度が既に埋まっていた。この日もほとんど徹夜状態での山歩きとなったが、今回は日帰りではないので、むしろこのくらいの方が、山小屋で良く眠れる筈だと思っていた(残念ながら、撤退により結果的には日帰りとなってしまったのであるが…)。駐車場に着く頃になって降り出した雨に「ついてないなぁ…」と思いつつ、レインウェア&レインハットといういでたちで歩き出す。
0639駐車場.JPG
新穂高温泉登山者用無料駐車場(6:39)


しばらくは、舗装された道を汗をかかないようにゆっくりと歩く。レインウェアを着て歩くのは、汗により中がムレムレになるので大嫌いなのだが、この日は寒いくらいに気温が低かったので、それほど悪くはないなぁと思っていた。

ところが、歩き出して間もなく、体調の異変に気付いた。どうやら風邪気味のようで、喉が痛いしイガイガする。ちょっとマズイと思ったが、おどさんは八ヶ岳で風邪が治ったと言っていた筈だし、山に入れば体調も良くなるだろうとこの時はまだ楽観していた。しかし、鉄人おどさんと変人makiwarikunとでは、基本的な体力が雲泥の差であるし、なにより、おどさんの八ヶ岳の時が快晴だったのに比べ、この日は冷たい雨と条件が悪すぎた。この後、体調は回復することなく悪化の一途を辿ることとなる。
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左俣林道ゲート(7:01)


左俣林道を進んでいくと、水場が設置された笠新道登山口に到着したので、ここで喉を潤す。ほとんどコースタイム通りのゆっくりしたペースであるが、この日は双六小屋までの予定だったので、新穂高温泉駐車場からコースタイム(7時間15分)通り歩いても、余裕はたっぷりある。
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笠新道登山口にある水場(7:52)


間もなくわさび平小屋に到着したので、ここで腰を下ろして少しだけ休憩する。小屋の前では冷たい水に浮かべられたトマトなどが売られているが、この寒さでは売り上げゼロであろう。
0805わさび平小屋.JPG
わさび平小屋(8:05)


わさび平小屋から更に林道を進んで行くと、やがて開けた場所にでるが、その先で林道から離れ小池新道に入って行く。
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小池新道入口(8:26)


小池新道に入ると石段の登りが始まるが、傾斜が急になるにつれて、どっと汗が噴き出してくる。いくらゴアテックスのレインウェアが水蒸気を透過させるといっても、汗をかいてしまえばビニールの雨具と体感的にはそれほど変わりはしない。ウェアの中はムレムレ状態で非常に不快である。短パン&Tシャツ姿でないと持っているポテンシャルを十分に発揮できないmakiwarikunが、最も苦手とするのがレインウェアを着ての登りである。

やがて秩父沢と呼ばれる休憩ポイントに到着するが、この雨の中では休憩する気にもならない。
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秩父沢(9:12)


ところが、秩父沢を過ぎたあたりから、なんとなくお腹の調子が悪いことに気付いた。おそらく風邪による症状だと思われるが、お腹がゴロゴロと不気味な音を発し出している。あるいは、冷たい雨にお腹が冷やされたせいかもしれない。

ピーンチ!!

これまでのゆったりペースから一転して、それからは全速力で飛ばすことにした。一刻も早く鏡平山荘に辿りつかないと、” 奥久慈の悲劇 ”(その時の記事はこちら)以来、およそ7ヶ月ぶりに封印してきた例の伝家の宝刀を抜くことになってしまう。

しかし、焦る気持ちと裏腹に、鏡平山荘はなかなか近付いてはこない。秩父沢から全速力で飛ばしても1時間半は掛かるので(コースタイムは2時間15分)、内心「ちょっと間に合いそうにに無いなぁ…」と、段々どこかに良い場所はないかと願う気持ちが強くなってきた。平日だというのに、すれ違う下山者は結構多かったので、登山道からは完全に死角になる場所が絶対条件である。

とその時、登山道のすぐ脇に枯れた沢がある場所に出た。これは天の助けかと思い、その枯れ沢に入り(踏み跡があった)、20mほど登っていくと…

あった~!!

一畳ほどの平坦地でかつ登山道からも全く見えないという理想的な場所が現れたのだ。キジ撃ちのために神が創った場所といっても過言ではない(いや、さすがにそれは言いすぎやろ!)。やはり私にはウン〇の神様が見守ってくださっているのか、キジ撃ちのピンチの際には、必ずといっていいほどこのような場所が現れる。

ここまでくれば、もう迷いはない。雨の中でレインウェアを着たままという、やや上級者向けの条件ながら、キジ撃ちマスターと呼ばれた男にとっては、さほどの事はない。素早く事を済ますと、ケルンのように大きめの石を積み重ねて処理しておいた。(このケルンを見てこの枯れ沢を登山道だと間違える登山者が居なければ良いが…)

神が創り賜われた奇跡のキジ撃ち場所から登山道に戻った際に、下山されてる方にバッタリ遭遇した。その方から「あれっ?」っと言われたので、「ちょっと、休憩してまして、えっへっへっへ~」と咄嗟に誤魔化したが(なんという不自然な理由だ!)、キジ撃ちしていたことがバレていないだろうか?
登山道脇の枯れた沢.JPG
登山道脇の枯れた沢(下山時に撮影)


すっきりした後は、もう急ぐ理由も無くなったので、再びゆっくりと歩き出すが、なんだかエネルギーの全てを吐き出してしまったようで、力が出ない。朝から何も口にしていなかったので、シャリバテ気味だったかもしれない。雨の時は、ザックカバーを外して行動食を取り出すのも億劫なので、どうしても行動食抜きで歩き続けてしまう。

やがて、シシウドが原と呼ばれるベンチが置かれた休憩ポイントに到着するが、雨をしのげる場所がないので、ここもスルーする。冷たい雨の中での4時間に及ぶ行動に、体が冷え切ってしまったようで寒くて仕方がない。
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シシウドが原(10:18)


標高を上げるにつれて雨風が強くなってきたので、体調の悪さも考慮して撤退すべきかどうか迷いはじめるが、とりあえず鏡平山荘で濡れたシャツを着替えたいと思い、もう少し頑張ることにした。

そして、やっとの思いで鏡平山荘に到着し、乾いたシャツに着替えてホッと一息つき、これからどうするかについて大いに悩む。あと2時間ほど進み当初の予定通り双六小屋に泊まるか、風雨が強まってきたことを考慮して鏡平山荘に泊まるか、体調の悪さを考慮して撤退することにするかの3択であるが、出した結論は、残念ながら撤退することにした。風邪気味の体調を抱えたまま快適とはいえない山小屋に泊まることは、こじらせてしまう危険が高いと判断した。

冷え切った体を温めるために、鏡平山荘で温かいラーメンかうどんでも食べようかとも思ったのであるが、頭が痛くて食欲もないので、行動食であるフルーツグラノーラをほんの少し食べただけで済ませた。登りでキジ撃ちした上に、下りでゲロ吐き(この言葉の山隠語はないのか?)では全くシャレにならないからだ。
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鏡平山荘(11:11)


強まる雨に登山道はまるで川のようになっているが、濡れた岩に足を滑らさないように気をつけながら、慎重のうえに慎重を重ねてゆっくりゆっくり下っていく。この体調と天候の中で、うっかり捻挫などの怪我を負ってしまうと、それこそ命の危険にさらされかねないので必死である。
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まるで川のような登山道(11:29)

時折すれ違う登山者と「最悪の天気ですねぇ」と言葉を交わしながら、ノンストップで下っていくが、出発から約8時間後になんとか駐車場に無事戻ることができた。

【感想】
・鉄人おどさんの記事によれば、この翌日は天気が回復したようなので、風邪が回復した今となっては、やはり予定通り双六小屋まで進むべきであったかと思わないでもない。いずれにしても私にとって今シーズンの北アルプスは終わってしまった。剣岳や鹿島槍ヶ岳や白馬岳などの予定していた山々のほとんどに登頂が果たせず、非常に不本意なシーズンとなってしまった。
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コメント 20

tochimochi

雨の中の山行はつらいですね。
縦走中ならまだしも、これから登るときはくじけてしまいます。
まして体調不良ならなおさらす。
3泊4日の計画は惜しいですが、撤退が正解でしょう。
たまには近場の山で確実な天候を狙っていったほうが、快適な登山が出来るような気がします。
by tochimochi (2011-10-03 20:39) 

おど

 またやっちゃいましたか・・・。 最近は携帯用のトイレもあるので、持っていったほうが山を荒らさないので良いでしょうね。(自分も人のことは言えませんが、大きい方はここ2年間は山小屋以外ではしていません。 携帯トイレの購入は考えています。)
 しかし、生憎の雨とは言え鏡平までいって撤退とは中々出来ないことです。 体調を優先したほうが当然良いと思うので、素晴らしいことだと思いますよ。(私の真似はしないでください。 苦笑)
 今年は、天候や仕事の関係で余りいけなかった山ですが、冬山もありますしこれからですよ。
 ところで、黒戸尾根は10月中以降には行けそうですかねぇ。 完全復活待ってます。(笑)
by おど (2011-10-03 21:05) 

テリー

9月15日-17日に双六岳に登りましたが、鏡平山荘まで行ったなら、ここで、滞留が良かったのでしょうね。この山荘近く鏡池からの朝焼け、そして、花見平からの槍・穂高連峰の絶景は、最高です。17日の下山は、雨に遭いましたが、幸い、たいした雨ではありませんでした。3000m 近い山は、もう冬山並みですね。
by テリー (2011-10-04 15:39) 

よしころん

マスター復活でしたか~
おどさんの第一声コメントに吹き出しました ぷぷっ!
携帯トイレ持参、賛成です。 なんなら1ダースプレゼントいたします❤
私も山行中はでませんねぇ。

沢になった登山道の写真を拝見して、悪夢の日の記憶が蘇りました。
ありがとうございます ^^;
できれば2度と雨の日には歩きたくない大ヘタレです。

怪我なく無事の下山なによりでした♪
by よしころん (2011-10-04 16:21) 

makiwarikun

<tochimochiさん
雨の中の行動はもうこりごりですよ。tochimochiさんのおっしゃる通り、近場の山で確実な天気の日を狙って山歩きを楽しみたいです。
by makiwarikun (2011-10-04 20:07) 

makiwarikun

<おどさん
私も携帯トイレは考えないでもないですが、山小屋に回収ブースが設置されてないと、家まで持ち帰るのは抵抗がありますねぇ。持ち帰った後の処理の仕方も考えてしまいます。
黒戸尾根ですが、私は今シーズンについては絶対に無理です。体力がめっちゃ落ちている上にかなり太ってしまいました。検査が終わったら、トレーニングを再開しますので、来シーズンに是非お願いします。
by makiwarikun (2011-10-04 20:30) 

makiwarikun

<テリーさん
鏡平山荘で泊まることはもちろん考えましたが、記事に書いている通り、体調が悪かったので、早く家に帰ってゆっくり静養したかったです。(下りは非常に辛かったですが…)
天気の良い時を狙って、また来シーズンに訪れたいですね。
by makiwarikun (2011-10-04 20:38) 

makiwarikun

<よしころんさん
マスターを返上して伝家の宝刀は永遠に封印した筈なのですが…(ポリポリ)。でも、人間である以上、自分は絶対に大丈夫なんて思っていても、何があるか分かりませんよぉ~。クレオパトラも吉永さゆりもピーピーになる時はなりますから…
私も雨の中の山行はもうこりごりです。

by makiwarikun (2011-10-04 20:49) 

Terry

写真、寒そうですねえ。?年前の三頭山以来キジ撃ってませんが、この寒さじゃオラが行っていてもキジ撃ったでしょうねえ。「腹が冷えればキジを撃つ」、ほとんどの人がそうですよ。マッキーさんだけではありませんよ。でも残念ですね。
by Terry (2011-10-05 18:14) 

makiwarikun

<Terryさん
この日は寒いのなんのって。これでもし風が強かったら、低体温症のピンチだったかもしれません。特に、グローブを忘れたので、手がかじかんでしまいました。今後しばらくは近場の山で鍛えなおしますよ。
by makiwarikun (2011-10-05 20:36) 

ひろたん

このわさび平がとても気になりました
来年はこのコースを歩きたいです
寒くて、やはりカイロですよね
寒さはとても辛いですよね
この時期はこんどは持参します・・冬用の用具をね・・・
by ひろたん (2011-10-05 23:08) 

Jetstream777

なかなか思うようにいきませんね。 
コースタイムみると、なんだかんだ言っても速いペースです。
北アルプス、冬が早くきそうです。 紅葉がみたいですね。
by Jetstream777 (2011-10-06 16:36) 

makiwarikun

<ひろたんさん
長い林道歩きとなりますが、林道から見る渓流の眺めも良かったので、また来年も同じコースでチャレンジしたいと思いました。ゆっくり家を出てわさび平小屋に泊まってから笠ヶ岳に登るというのも良さそうです。
by makiwarikun (2011-10-06 22:03) 

makiwarikun

<Jetstream777さん
仕事とはいえ検査がなかなか終わらないのが災いの元ですよ。
これからの季節はもう少し近場で紅葉でも楽しみながらのんびり歩きたいと思います。どこかの山小屋でオフ会しましょうよ!!
by makiwarikun (2011-10-06 22:09) 

Jetstream777

再訪。 早く検査終わるといいですね。 
オフ会はいつでも歓迎です。 やりましょう。
じつは金~日曜とゆっくり山歩の予定でしたが、大混雑で結局2日で切り上げましたが、目的は達成。 また報告しますね。
by Jetstream777 (2011-10-09 22:44) 

山子路爺

3日は晴れていましたよぉ~。
惜しかったですねぇ。
このところキジの記事は見なかったのですがねぇ~。
by 山子路爺 (2011-10-10 14:24) 

makiwarikun

<山子路爺さん
この日の翌日(10/1)から天気は回復したようですねぇ。やっぱり頑張って双六小屋まで行けばよかったかなぁ…。
by makiwarikun (2011-10-17 21:20) 

Jetstream777

ひょっとしてまだ続いているのでしょうか? ブログがチョット途切れるときがかりですが、それどころではなく忙殺されているのかなとも察します。
長い人生にはそんなことが、幾度かありますよ。 陰ながら応援してますので、頑張ってください。
by Jetstream777 (2011-10-26 22:08) 

よしころん

こんばんは~

お変わりありませんでしょうか!?
jetさん同様、お仕事ならいいのですが、
体調崩されていないかと、ちょっと心配・・・

実は私もこっそり応援してますよ~~ ^^v
by よしころん (2011-11-06 21:44) 

ひろたん

こんにちは^^
お元気ですか、 Jetstream777さんと同様です。
来年も宜しくお願い致します。
見せてくださいね。
by ひろたん (2013-12-31 09:51) 

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