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2010年最後の登山は最低だった(雲取山敗退) [登山]

2010年度は私が山登りを始めて実質的に最初の年となったが、その中でも印象深いのは、雪の雲取山爆走(2月)、八ヶ岳で山小屋デビュー(8月)、槍ヶ岳で涙の敗退(9月)、黒戸尾根(甲斐駒ヶ岳)気合の日帰り往復(10月)の4つであろう。

特に、登山初心者である私が無謀にも積雪の雲取山に軽アイゼン1つで挑み、箱根駅伝の山下りを彷彿させる爆走により山頂から2時間で鴨沢まで戻ったのがmakiwarikun伝説の始まりだった。(その時の記事はこちら

雲取山ではあやうくウン〇を漏らしそうになったり(その時の記事はこちら)、燧ケ岳で滑落した後にテント泊でトレーニングを行ったり(その時の記事はこちら)と、何かと思い出の多い山であるが、2010年の大晦日にこの雲取山へ行くことにした。

今回のテーマは、先日購入した冬山用の登山靴の慣らしと12本爪の本格アイゼンの練習である。雲取山荘のホームページによれば、山頂付近では20cm程度の積雪があるということなので、なんとかアイゼンの練習はできるだろう。

ところが、2010年を締めくくる筈のこの登山が私にとって実に辛いものとなった。こんなことなら家でのんびりと「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しスペシャル絶対に笑ってはいけないスパイ24時」を観るのだったと後悔している。

いったいmakiwarikunに何が起こったというのか?!(今回はハプニングによりほとんど写真を撮っていません。また、食事中の方はこの先は読まないで下さい。)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

日程:2010年12月31日(日帰り)
天候:晴れ
コースタイム:
9:15 鴨沢BS→9:43 小袖乗越→10:50 堂所(5分休憩))→11:50 七ツ石小屋→12:15 ブナ坂→12:20 休憩地(30分休憩)→13:15 七ツ石小屋→13:48 堂所→14:45 小袖乗越→15:04 鴨沢BS

直線距離:17.111km
沿面距離:17.773km
累積標高(+):1680m
累積標高(-):1680m
所要時間:5時間49分

雲取敗退地図.JPG
GPSトラックデータ

雲取敗退グラフ.JPG
GPSデータグラフ表示

10月に甲斐駒ヶ岳への黒戸尾根を日帰り往復して以来、山に登る回数が急激に減ってしまった。11月、12月と続けて僅か1回ずつしか山に向かっていないのだ。来年度の目標に掲げていた黒戸尾根をあっさりクリアしてしまった事により、少し気が抜けてしまったのであろうか?あるいはこれが所謂”燃え尽き症候群”というやつかもしれない。

いつも通り始発電車に乗り奥多摩駅に向かうが、電車の中は登山姿の乗客が非常に少なかったので、さすがに大晦日にまで山に登ろうとする物好きは少ないのかと思った。ところが、奥多摩駅からのバスが不思議なことに超満員である。どうやら雲取山荘に泊まって初日の出を見ようとされる団体さんと運悪く乗り合わせてしまったようなのだ。

バスは定刻通り9:10に鴨沢BSに到着する。35分もの間、立ちっぱなしで満員の車中で揺られると、無駄なエネルギーを消費して少々損をしたような気分になる。

いつも通り停留所前のトイレで用を足し、準備を整えてから歩き出す。今回のテーマは雪山登山の予行演習なので、とにかく汗をかかない程度のゆっくりとしたペースで歩くことを心掛けた。雪山で大量の汗をかくと、その汗が冷えて非常に危険だからである。

なので、この日は先行者が前に見えても敢えて抜くようなことはせずに、ゆっくりと付いて行く。もっとも、新しい雪山用の登山靴(アク/フィッツロイGTX)は夏山用の登山靴に比べて非常に硬く私にはまるでスキーブーツを履いているように感じられたので、スピードを上げようにも上げられないのが正直なところ。

登山道にはほとんど雪は積もっていないのだが、所々で凍結している箇所があるので、滑らないように注意しながら進む。それでも日が当らない場所は雪が融けずに残っているので、雪景色の雰囲気だけは楽しむことができた。気温は氷点下4~5℃くらいであろうか、キリッとした空気が火照った顔を冷やしてくれるのでとても気持ち良い。
0959雪道.JPG
雪が残る登山道(9:59 標高900m付近)

この日は、極寒の中で暖かいカップラーメンを食べてみたくて、ガスバーナーを持参してきたのだが、ラーメン用の水を七ツ石小屋先の水場で補給する。七ツ石小屋からブナ坂までの巻き道には雪が10~20cm積もっており、そろそろアイゼンを付けようかと思ったのであるが、装着に不慣れであることを考慮すると少し広い場所が現れるまでは登山靴のまま進むことにした。先行者の足元および足跡を観察してみても、ほとんどの方はアイゼンを付けていないようであった。

そしてブナ坂に到着したのが12:15。いくらゆっくり歩いたといっても、前回(11/3)に歩いた時より約50分も遅い。新しい登山靴による影響もあるとは思うが、山行不足によりスタミナが落ちていることに間違いはないだろう。2011年はコンスタントに週に1回程度の山登りを行いたいと思っている。

広々としているブナ坂でアイゼンを装着しようとしたのであるが、先に目をやるとなんと雪がほとんど無いではないか!!これではアイゼンを付けることはできない。お腹も空いてきたので、ブナ坂から5分程のところの休憩ポイントでカップラーメンを食べることにした。早速ガスバーナーでお湯を沸かすが、歩いている時にはあんなに暑かったのに、止まった途端にメチャクチャ寒くなったので防寒服を着込んだ。

極寒の中でのカップラーメンはやはり美味しかった。体の芯から温まるようだ。日帰り登山の際には、行動食のみを持参し落ち着いて食事を採ることが少ないmakiwarikunであるが、たまにはコッヘルとバーナーを持参するのも良いものだと思った。

ところが、カップラーメンを食べ終わるのを見計らうかのように”奴”が襲い掛かってきたのだ。「きゅるるるるる~」と下腹部から不気味な音がするし鈍い痛みもある。「まずい!こんな時に…」 ”奴”に襲われたのでは、登頂もアイゼントレーニングも二の次である。とにかく一刻も早くトイレに辿り着くだけだ。

先の奥多摩小屋に向かうよりも七ツ石小屋の方が近いと判断して来た道を引き返すことにしたのだが、こんな時は僅か20分程度の距離が無限の道程のように遠く感じる。

そんな時、突然私の目の前に脇へのうっすらとしたトレースが現れた。七ツ石小屋はあと10分くらいだろうから頑張れば行けないことはないと思ったのだが、そのトレースの先には”キジ撃ち”するのに絶好の場所があるような気がした。私のようにO.P.P(お腹ピーピー)症候群を抱える者にとって、”キジ撃ち”は山を続ける為には避けられない道であろう。「お前も山登りをしようとするならば、一発かましてみろ!!」と山の神様が私を試しているのではないかと考えた。

そして、トレースを辿り、更に低木をかき分けて脇に入っていくと、まさに”キジ撃ち”に絶好な場所が現れたのである。登山道からは完全に見えない上になによりも平坦でしっかりしたスタンスを取れるのが良い。その朝、忘れ物はないかと持ち物チェックをして、念のためティッシュをザックのポケットに詰め込んだナイスな判断に感謝しながら、これはやるしかないと決断した。

人生初の野グ〇を経験し、すっかり意気消沈してしまったmakiwarikunは、トボトボと帰路に着く。当初の予定では16:46発のバスに乗るつもりであったのだが、このアクシデントによってなんとか1本前(15:17発)のバスに間に合いそうである。目的としていたアイゼンの練習も出来なかったし、散々な年の瀬となってしまったなぁと思っていた。

そんなmakiwarikunに更なる災難が襲い掛かる。堂所を越えて後はゆっくりと下るだけだと思っていたのであるが、ハンディGPSを探してポケットに手を突っ込んだ時のこと、うっかり凍結している箇所を踏んでしまい、ツルンと派手に滑ってしまったのだ。松本人志も真っ青の決してすべらない男のmakiwarikunにしてまさかの事故である。

転んだ際に右膝を強打するとともに右足首を捻ってしまった。あまりの衝撃にこの先歩けるかどうか心配になったのだが、相当な痛みがあるもののなんとか歩けるのでホッとした。ズボンは擦り切れており、膝からの出血が衝撃の強さを物語っている。しかし、考えようによっては出すものを出した後の転倒であったので本当に良かった。これがもし”キジ撃ち”前に起こっていたら…と考えただけでも恐ろしい。黄門様の大決壊は必至であろう。

と色々あった大晦日の山行であったが、足を引きずりながらも15:04になんとか鴨沢BSに戻ることができた。硬い登山靴により、小指の外側にはマメも出来ているらしくとても痛い。満身創痍とはmakiwarikunのこの状態を表すためにあるような言葉である。

山の中で強烈な便意に襲われたのは今回で三回目(二回目は9/15大天井岳付近、その時の記事はこちら)となるが、不思議なことに自分にとってラッキーな状況が訪れなんとかピンチを脱することができている。(今回はピンチを脱したと言えるかは微妙であるが…)

おそらく私は”ウン〇の神様”に守られているのだろう。ウン〇の神様よありがとう!そこで私は感謝の意も込めてウン〇の神様を称える歌を作ることにした。これで来年の紅白出場は決まったようなものだ。

ウン〇の神様(作詞:makiwarikun)
♪♪ 雲取山には~ それはそれはくっさい~ ウン〇の神様がいるんやでぇ~ ♪♪
(植村花菜さん、ごめんなさい…)

当ブログをご訪問いただいている皆様。年明け早々から下品な記事になってしまいましたが、今年も宜しくお願い申し上げます。

雪山の準備完了 [登山]

私にはそのネーミングのカッチョ良さからして、とても気になっている山がある。その山の名前こそ
飛龍山!!(ひりゅーさん!!)

槍ヶ岳や剣岳もまぁまぁカッチョ良い名前だとは思うが、こいつの山名に比べれば遥かに凡庸に感じてしまう。

名前から受けるイメージというのは、意外と重要であると私は思っている。例えば、もしも私の名前が”反町 龍司”なんていうめっちゃカッチョ良い名前だとしたら、おそらく私の立ち居振舞いもワイルドかつクールになっていた筈であり、女性からも更にモテモテだった筈だ。(まぁ高貴な私の本名通りの高貴な立ち居振舞いにより、十分モテモテではあるのだが…という夢を良く見る)

その点、南アルプスの北岳(3193m)、間ノ岳(3189m)、農鳥岳(3026m)のいわゆる白峰3山は、そのぼんやりした名前によって随分と損をしているのではなかろうか?いずれも3000mを越える堂々たる名峰なのだが、私にはイマイチ登頂してやろうという意欲がなぜか湧かないのである。日本で2番目の高さを誇る山の名前が北岳って…。まぁ世界第2位の標高の山が更に味も素っ気も無いK2(ケーツー)という名前なので、1番でなければそんなもんなのかもしれない。

さて、12月19日(日)にそのカッチョ良い飛龍山に登る計画を立てた。その隣の雲取山を経由してピストンで行こうとしたのだが、かなりのロングコースになるため、車で小袖乗越まで乗りつけ、6時頃からヘッドライトの明かりを頼りに歩き出せば、なんとか日暮れ前には戻ってこれる筈だと考えた。次のグラフがその予定の概要であるが、片道14kmにもなるハードコースである。体調万全の状態において気合十分で臨まないと完走は危うい。
雲取飛龍グラフ.JPG
小袖乗越→雲取山→飛龍山 グラフ

ところが、前日(18日)になっても12日のバドミントンの練習で痛めた右足首の状態が思わしくない。この状態では、筑波山すら登れないのは明らかなので、残念ながらこの計画は延期にすることにした。しかし、今になって冷静に計画を見直すと、日の長さが1年で最も短いこの時期に決行するにはちょっと無謀のような気がする。もう少し日が長くなった頃にチャレンジしたいと思う。


それにしても、今年のmakiwarikunはバドミントンで足首を痛める事が多い。その理由は分かっている。私のプレー中のフットワークがおかしいからである。次の写真は、現在練習で履いているバドミントンシューズをテーブルの上に置いて後方から撮ったものであるが、明らかに外側に向かって傾いている(特に右足)のが分かる。これは、普段歩いている時も同じなのだが、makiwarikunが極端に足の外側から着地する癖があるので、靴の外側ばかりが擦り減っていることによる。そして靴が擦り減ることによって、更に足の外側に重心が掛かるという悪循環に陥っているのだ。山道具ばかりを買うのではなく、そろそろバドミントンシューズも買い換えなければならないと思っている。
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外側が極端に擦り減っているバドミントンシューズ


足首が痛いために山に行けなくなり、悶々とした気持ちを鎮めるためには、やはり登山用品をパーッと買うしかない!!

今年の2月に雪の雲取山に登り(その時の記事はこちら)、雪山の素晴らしさが忘れられないmakiwarikunは、今シーズンはもう少し本格的に雪山に挑戦したいと思っていた。そこで、先月からコツコツと冬山用具を買い揃えてきたのであるが、最後に残しておいた登山靴とアイゼンとピッケルをこの日一挙に購入することにした。

まず、登山靴であるが、「アク/フィッツロイGTX」というモデルを選んだ。足首の自由度が高く、アイゼンとスノーシューを半々で利用する人や、歩き易さも重視したい人向けのモデルという点が自分に合っていると思ったからだ。それにしても冬山用の登山靴はアイゼンを装着しなければならないので当然ではあるが、夏用の登山靴に比べて非常に硬く感じる。

次にアイゼンであるが、購入した登山靴がワンタッチ式に対応していないので、セミワンタッチ式の国産(カジタックス製)12本爪アイゼンを選んだ。雪の雲取山に登った時には6本爪の軽アイゼンで十分であったが、本格的に冬山をやろうとするならば、10本爪以上のアイゼンは必携だ。

最後のピッケルは何が良いのかさっぱり分からないので、アイゼンと同じメーカーの縦走用の国産品(75cm)を購入したのであるが、自分の身長(172cm)からするとあと3~5㎝ほど短い方が使い易かったようだ。

それ以前に購入していた冬山用具は以下の通りであるが、今回の分も含めての購入金額総計は約15万円である。12月分給料の年末調整により平常月より多い分はこれですっかり相殺されてしまった。

スパッツ:雪山用のロングサイズであり、アイゼンの爪でも切れにくい丈夫な生地のものを購入。
ゴーグル:曇り止め加工がされた眼鏡をかけたままで装着できるタイプのものを購入。
スノーシュー:「TSLスノーシュー305エクスプローイージー」を半額という値段につられて購入。色はピンクで少し気持ち悪い…
アウター:厚手のハードシェルタイプのジャケットとパンツを購入。
アンダーウェア:高機能ロングタイツを購入。
ソックス:メリノウール素材のものを購入。
バラクラバ(目出帽):銀行強盗する際にも使えるものを購入(んっ?)。
手袋:インナーグローブと3層構造となっている防水グローブを購入。
冬山道具.JPG
11月から買い揃えた冬山用具の数々


昨年、大阪の実家に帰省した際に山登りを始めた事を親に話したのであるが、危ないから冬山だけはやらないようにと忠告されている。しかしながら、登山が趣味だと宣言しておきながら夏山しか登らないようでは、ふぐのフルコースを食べに行ったにも係わらず毒が怖いからと白子を食べないようなものではないかと思う。(私自信はふぐの白子を一度も食べたことがないのだが、これは単に私が貧しいからである。)多少のリスクを恐れていては、本当に美しい景色に出会うことはできない。

とにかく冬山は素晴らしい。何よりもアブが一匹も居ないのが良い。夏に武尊山に登った際には、恐ろしい顔をした巨大な殺人アブがどどすこ(んっ?どどすこ?)と襲ってきたので私は思わず叫んでしまっていた。
「どどすこすこすこアブ突入!」
(なるほど!これが言いたかったのね。それほど上手くもないし…)

奥多摩(日向和田駅~日ノ出山~大岳山~奥多摩駅) [登山]

12月5日(日)、なんやかんやで1ヶ月間も山から遠ざかっている。久しぶりに訪れる山はどこにしようかとしばし悩んだのであるが、結局、7ヶ月前のゴールデンウィーク(5/4)に行った奥多摩の7山の頂を巡る縦走コースを再び歩くことにした。

このコース、歩行距離が20km程度で電車だけを乗り継いで行ける場所はないかと考え、やっと探し当てたmakiwarikunお気に入りのコースである。前回では体調の悪さもあり、フラフラになりながらやっとの思いでなんとか完走することができたのであるが、この7ヶ月間に積んだ経験によって成長した今のmakiwarikunなら余裕で歩き通せることが出来るだろうか?

奥多摩よ!マゾっ気十分なmakiwarikunを今回も楽しませてくれ!「おくたまはマゾ[黒ハート]」なんちゃって…(「わっかるかなぁ~?わかんねぇだろうなぁ~!」 それにしてもmakiwarikunのダジャレ&ギャグはことごとく古過ぎる!!)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

日程:2010年12月5日(日帰り)
天候:快晴[晴れ]
コースタイム:
8:05 日向和田駅→9:07 三室山山頂→10:08 日ノ出山山頂→10:45 御岳神社→11:39 奥の院→11:55 鍋割山山頂→12:48 大岳山山頂→13:40 鋸山山頂→14:52 愛宕山→15:15 奥多摩駅

直線距離:19.909km
沿面距離:20.947km
累積標高(+):2563m
累積標高(-):2409m
所要時間:7時間10分

御岳神社地図.JPG
GPSトラックデータ

御岳神社グラフ.JPG
GPSデータグラフ表示


御岳神社計画.JPG
登山計画&結果表


いつも通り始発電車に乗り奥多摩に向かう。電車の中は、1ヶ月前(11/3)の紅葉シーズンや7ヶ月前(5/4)のゴールデンウィークに比べると、遥かに登山スタイルの乗客が少ない。これなら静かな山歩きが楽しめそうだ。

登山口は日向和田駅から20分程歩いたところにある梅の公園の奥にある。駅に設置されている案内図で道順を確認してから歩き出すが、長袖のシャツの上にフリースとダウンのジャケットを着ているにも係わらずとても寒い。
0803案内図.JPG
日向和田駅の案内図(8:03)


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梅の公園(8:21)


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登山口(8:25)


ゴルフコースを右手に見ながら登山道が始まるが、ジグザグに進みながら少しづつ高度を上げていく。つい先程まであんなに寒かったのに、10分も歩くと早くも汗が噴き出してきたので、フリースとダウンジャケットをザックに収納する。

登山口から40分程で最初のピークである三室山山頂に到着した。今回の山行のコンセプトとして50歳突入を目前にして40台の美しい肉体(?)を写真に残すことを掲げていたので(ナルシストか!)、山に初めて三脚を持ち込むことにした。カメラはもちろん先日購入した山カメラ”ソニーサイバーショットDSC-TX5”だが、今回が記念すべきデビューとなる。

そして三脚を使って最初に撮った写真がコレだ!!(後ろが明るいので逆行補正モードで撮るべきだったか?)
0908三室山.JPG
三室山山頂(9:08 647m 「とっつぁんよ!まだまだ余裕だぜ!!」)


続いて哀愁たっぷりに歩いている後姿も撮ってみた。自分のカッコイイ(?)登山姿をブログで世界に発信して、気分はすっかり登山家”栗城史多”である。
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三室山からの登山道(9:09 makiwarikunの哀愁漂う後姿。男は背中で人生を語るのだ!)


三室山から少し下ると”つるつる温泉”への分岐に到着する。つるつる温泉は、都心から近い天然温泉施設ということで、結構人気のある場所らしいのだが、いつか今回の逆コースとなる奥多摩から歩いて、つるつる温泉でのんびりしてから帰路につくというのも面白いと思った。
0924つるつる分岐.JPG
つるつる温泉分岐(9:24)


三室山から1時間ほどで2番目のピークである日ノ出山山頂に到着した。雲ひとつないこの日は、山頂からの展望は素晴らしく、丹沢の山々もはっきりと眺めることができた。ただ少し残念だったのは、手前の山に隠れてしまい、富士山が先っぽの方しか見えないことだった。
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日ノ出山山頂(10:09 902m 「へへっ、見ろよとっつぁん!最高の天気だぜ!!」)


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日ノ出山山頂から丹沢方面を臨む(10:13)


次に目指すは、日ノ出山山頂からも目にすることができた御岳神社である。御岳神社はパワースポットとして最近注目の場所ということで、安易にパワーをゲットしたがっている人で(?)溢れている。

しかしパワースポットってなんじゃらほい?定義付ければ、そこに行くことによりパワーが貰えて、元気になったり健康になったりすると信じられている場所ということになるのだろうが、私に言わせりゃアホらしいの一言。明治神宮にある加藤清正の井戸がパワースポットとして特に有名らしいが、なんで井戸を見てパワーが出るんじゃい?パワーなんてもんは本人のやる気ひとつでどうにでもなるもんで、そんなもんに頼るという発想自体が情けないと思う。


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御岳神社仲見世(10:43 わさびなど新鮮な山菜やお菓子や記念品などが売られている)


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御岳神社大鳥居(10:45)


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武蔵御岳神社本殿(10:51 「パワーを下さい。お願いします。アーメン」)


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畠山重忠像(10:56 宝物殿には畠山重忠が奉納した鎧が収納されているらしい)


パワースポットに寄らずともパワー十分のmakiwarikunはノンストップでズンズン進む。今回も行動食はポケットの中に大量に詰め込みながらハイドレーションとの組み合わせで、ゴールまで写真撮影以外の休憩は取らない予定である。

神社の階段を少し戻り、右手の細い道を下って行くと登山道に戻るが、間もなく休憩所がある長尾平に到着する。そこには展望台への案内があったので、左折してどんな景色が見れるのかとワクワクしながら5分ほど進む。展望台というからには富士山の全容が拝めるのかと思いきや、そこで目にした景色がコレだ。 
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長尾平展望台からの眺め(11:05 なんの変哲も無い景色が広がる)

「なんの変哲もないがな!!」 ガックリである[バッド(下向き矢印)]。奥ノ院への急登を前にして往復10分の時間と体力を無駄に消耗してしまった。どうもこの展望台、都心の高層ビルを遠望することができる場所という位置付けらしいのだが、嫌でも毎日のように高層ビルを見ている人間にとっては、「なんの意味もない!なんの意味もない!」


鍋割山に向かう途中に奥ノ院へ向かう分岐があるが、そこには”天狗の腰掛杉”と呼ばれる樹齢350年、樹高60m、幹周6,5mの大きな杉の木がある。
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天狗の腰掛杉(11:16 確かに向かって左に張り出した枝に腰掛けることができれば気持ち良さそうだ)


天狗の腰掛杉から奥ノ院までは標高差200m程度の急登であるが、ここがこの日のコースの中で最もきつかった。
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奥ノ院(11:39)


前回(5/4)に登った時には気付かなかったのだが、奥ノ院は”男具那ノ峰(オグナノミネ)”という山頂のすぐ下にある。山頂には日本武尊(ヤマトタケル)を祀っている祠があり、ヤマトタケルが幼少時にオグナと呼ばれていたことがこの山名の由来ということだ。
1142男具那ノ峰(オグナノミネ).JPG
男具那ノ峰(オグナノミネ)山頂(11:42 1070m なんて読みにくい山頂標識だ!)


次のピークである鍋割山山頂へは、男具那ノ峰から10分ちょいで到着したが、ここは見晴らしも効かないので写真を1枚撮っただけで先を急ぐ。
1155鍋割山.JPG
鍋割山山頂(11:55 1084m 「とっつぁんよ!やっと半分過ぎたぜ!!」)


鍋割山から大岳山への道も非常に歩き易いので順調に飛ばして行く。日向和田駅から大岳神社までの道はmakiwarikunの苦手な岩場もなく気持ちの良い歩きが楽しめた。

大岳神社まで来ると、大岳山の頂は目と鼻の先だ。岩場の急登をヒーコラしながら10分ほど進むと、多くの人で溢れている山頂に到着した。

ここが人で溢れている理由がこの景色である。ここでこの日初めて富士山の荘厳な全容を拝むことができた。
1248富士山.JPG
大岳山山頂から富士山を臨む(12:48 逆行補正モードで撮影)


1249大岳山.JPG
登山者で溢れている大岳山山頂(12:49 「富士山が綺麗だね~[ハートたち(複数ハート)]」)


大岳山からゴールの奥多摩駅までは、基本的に下り道が続くのであるが、所々で岩場の急斜面が現れる。このあたりから疲労によりだんだん足に力が入らなくなり始めていたので、細心の注意を払いながらゆっくりと降りていく。

前回はヘロヘロになり息も絶え絶えに乗り越えた鋸山と愛宕山の小ピークであるが、今回は幾分余裕を残しながら最後まで着実に歩を進めることができた。流石は黒戸尾根を日帰り往復した男、makiwarikunだ!
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愛宕神社(14:52)


愛宕神社からの長い急階段を下り、舗装された道まで来れば奥多摩駅はすぐそこだ。奥多摩ビジターセンターのトイレで汗臭い下着を替えて、出発から7時間10分後の15時15分に奥多摩駅に無事到着した。

【感想】
・この日は1.5㍑の水分を用意してきたのであるが、予想以上に気温が上がり汗を大量にかいてしまったことにより、鋸山を越えたあたりで水切れとなってしまった。たとえ冬場であっても何があるか分からないので、水分は余裕を持って用意すべきであった。

奥多摩石尾根(鴨沢~七ツ石山~鷹ノ巣山~奥多摩駅) [登山]

7月17日に梅雨が明けて以来、毎週のように山に向かっていたmakiwarikunであるが、この2週間は車の故障と悪天候のために自宅待機を余儀なくされていた。その間、山岳小説を読んだり登山に関するテレビ番組(録画)やDVDを観たりして暇を潰していたのであるが、山を始めてから1年で山中毒にかかってしまったのであろうか、以下のような禁断症状が出始めた。
 1.眠りが浅くて、毎晩、リアルに山に登っている夢を見る。(たまにはエッチな夢も見たいぞ!)
 2.倦怠感でなんとなくやる気がしない。(単なる更年期障害か?)
 3.ちょっとしたことでイライラする。(いとうあさこと同じ症状か?)
 4.登山に関する道具が無性に買いたくなる。(冬山用登山靴とピッケルを買おうかと思案中…)

これはイカン!と文化の日にかねてから気になっていた奥多摩の石尾根を歩くことにしたのであるが、このコースは標高差がそれほどない代わりに距離が長い。標準コースタイムは10時間ということであるが、15時26分発のホリデー快速おくたま号に乗って家路に着きたいと考えたので、6時間10分で走破することを目標として計画を立てた。最近、ウォーキングすらサボり気味であるmakiwarikunは果たして無事に奥多摩駅に戻ることができるのか?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

日程:2010年11月3日(日帰り)
天候:晴れ[晴れ]
コースタイム:
9:16 鴨沢バス停 →9:38 小袖乗越 →10:36 堂所 →11:27 ブナ坂 →11:38 七ツ石山 →11:58 千本ツツジ→12:36 巳ノ戸の大クビレ→12:54 鷹ノ巣山 →13:06 水根山 →13:45 六ツ石山分岐→14:11 三ノ木戸山分岐→15:18 奥多摩駅

直線距離:23.617km
沿面距離:24.303km
累積標高(+):2111m
累積標高(-):2329m
所要時間:6時間2分

奥多摩地図.JPG
GPSトラックデータ

奥多摩グラフ.JPG
GPSデータグラフ表示

奥多摩エクセル.JPG
登山計画&結果表


いつも通り始発電車に乗り奥多摩駅に向かうが、紅葉シーズン真っ盛りの中での絶好の観光日和とあって、青梅駅から先はまるで通勤電車のような混雑ぶりだった。必然的に奥多摩駅から鴨沢に向かうバスも混雑していたのであるが、おかげで鴨沢バス停への到着が少し遅れた上にバス停のトイレにも行列が出来ていた。

当初より余裕のない計画に加えて出発時間が予定より遅れてしまった事に焦ったmakiwarikunは、ストレッチも行わずいきなりトップスピードで歩き出す。行動食はザックのサイドポケットに詰め込んでいるので、ハイドレーションシステムと相まって食料および水分補給の際にザックを降ろすことなく歩き続けることができる。(9:16)
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小袖乗越手前の広場 (09:35 普段は余裕たっぷりの場所もこの日はほぼ満車状態)


小袖乗越から堂所までは緩やかな歩き易い道が続く。ここを登るのは今回で5回目であるが、樹林帯の中の雰囲気の良いこの道を歩くのは本当に気持ちが良い。おそらくこれからも何度となくこの道を歩くことになるだろう。
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歩き易い登山道 (09:47 堂所までは緩やかな雰囲気の良い道が続く)


雑木林の中の小さな平地である「堂所」は、この先の急登に備えての休憩ポイントであるが、makiwarikunは当然ながらノンストップで通過する。この日の厳しいスケジュールによって、6時間ノンストップもやむなし!という覚悟だ。(10:36)
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堂所 (10:37 見上げれば美しい紅葉が…)


堂所からの道は段々と傾斜を増してくるので少々キツイ場所であるが、木々の間から姿を現す富士山や紅葉が目を楽しませてくれる。
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七ツ石尾根の紅葉 (10:46 堂所の先の急傾斜から臨む)


そして出発から2時間11分後、石尾根との合流点であるブナ坂に到着した。前回(8/14)はトレーニングを兼ねてかなり急いで2時間50分かかっているので(但しテントを担いでいた)、それより40分も速い今回は自分の限界に近いハイペースだと言える。いつもはここを左折して雲取山方面に向かうのであるが、この日は右折して七ツ石山山頂を目指す。(11:27)
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ブナ坂 (11:27 ここを右折して七ツ石山方面に向かう)


そしてこの日の最高標高地点である七ツ石山山頂(1757m)に到着した。ここで雲取山に向かうという方と一緒になり、お互いに写真と撮り合った後にしばし談笑するが、スケジュールに余裕がないので後ろ髪を引かれながらも先を急ぐ。(11:43)

それにしても自分自身の姿を改めて写真で確認するに、お腹がポッコリ出ていてなんと見苦しいものよ。自分自身の姿を鏡に映すことにより、嫌でもたるんだ身体を目にさせ、意識および潜在意識に訴えかけてダイエット意識を高めるという「鏡ダイエット」なる方法があるらしいが、これは真理だなぁと認識した次第。自分も少しは痩せないと…。でも冬は太りやすいんだよなぁ…。
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七ツ石山山頂 (11:39 メタボだジョー!その出っ腹で何故に山に登れる?)

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富士山 (11:42 七ツ石山から富士山を臨む)


七ツ石山から奥多摩駅までの石尾根が道の未知…じゃなくて未知の道。雲取山~七ツ石山間の石尾根は何度か歩いているが、アップダウンが少なくて展望も良くて開放感いっぱいの素晴らしい道だけに、否が応でもこの先の道にも期待感が膨らむ。

期待通り、七ツ石山~鷹ノ巣山の石尾根は実に快適で素晴らしい道だった。しかも、ここを歩く人はトレイルランナー以外はほとんど居なかったというところも自分好みである。
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快適な石尾根 (11:48)


やがてログハウス風の綺麗な建物が見えてきたと思ったらそこが鷹ノ巣山避難小屋であった。避難小屋の前には多くの方が休憩されていたが、おそらくは峰谷のバス停から浅間尾根を登ってこられたのであろう。(12:36)
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鷹ノ巣山避難小屋 (12:36)


鷹ノ巣山の急登をヒーコラしながら登りきったところが山頂(1737m)であるが、「展望の山」と呼ばれることがある程ここからの眺めは素晴らしく、多くの登山者がこの景色を楽しんでいた。
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鷹ノ巣山への急斜面から南西方面を臨む (12:43 奥にはうっすらと富士山が…)

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鷹ノ巣山山頂 (12:54)

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鷹ノ巣山から水根山方面を臨む (12:55)


鷹ノ巣山から先は、防火帯の幅広い登山道が続いているが、落ち葉によりフワフワの道はトレイルランナーならずとも走りたくなる。防火帯とは、防災上設けられる可燃物(樹木)が無い延焼被害を食い止めるための帯状の地域のことを言うのであるが、ここは視界も良好で実に爽快な歩きが楽しめた。
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幅広い防火帯の登山道 (13:10)


途中の水根山(1620m)は周りより少しだけ高くなっている場所であるが、山頂を示す板も何もないので、GPSにチェックポイントとして登録してなければ気付かずに通り過ぎたであろう。

石尾根は総じて緩やかな歩き易い道が続くのであるが、途中で一箇所だけmakiwarikunの苦手な岩場混じりの急斜面の下りがあった。後で調べたところそこは城山(1523m)からの下りであることが分かった。

城山からの急な下りを過ぎれば再び歩き易いが現れたので、快調に飛ばすことが出来た。やがて六ツ石山分岐に辿り着いたが、ここから5分程度の場所にある六ツ石山の山頂を踏むかどうかで少し迷った。ここまで予定より15分ほど早く来ているので往復10分なら行けないことはないと思ったが、ノンストップで4時間半も歩き続けており、さすがに足の疲れを感じ始めていたので、確実に時間内に戻るために自重することにした。(13:46)
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六ツ石山分岐 (13:46)


六ツ石山分岐から狩倉山の南側を巻いて下って行き、三ノ木戸山の分岐を過ぎると、うっそうとした杉の樹林帯に入りこれまでと雰囲気がガラリと変る。日当たりが悪いので粘土質の道はジメジメと湿っており、おかげで滑って転んでしまった。泥を払いながら更に下っていくとやがて舗装された林道に出会った。(14:52)
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舗装された林道に出る (14:52)


しばらくクネクネした林道を下り、途中から再び登山道に入って少し行くと、つつましい羽黒三田神社に出た。見覚えのある奥多摩ビジターセンターが見えてきたので、ここで初めて予定時刻内に奥多摩駅へ戻れると確信した。(15:05)
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羽黒三田神社 (15:05)


神社からの急坂を下り、民家の間を抜けてしばらく進み、階段を下ると交通量の多い国道411号線(青梅街道)に出る。そして15時18分、出発から6時間あまりで奥多摩駅に到着した。15時26分発ホリデー快速おくたま号は既に多くの乗客で埋まっていたが、最後尾の車両になんとか座ることができた。疲労困憊のこの状態で、もし座れなければかなり辛かった筈だ。


【感想】
・結局、この日はザックを一度も降ろすことなく6時間ノンストップで歩き続けることができた。気温や道の状態等のコースコンディションが絶好で体調も良かったからであろうが、24km弱の道程を6時間余りで歩けた(平均速度3.9km/h)という事は自分でも驚いている。これぞ黒戸尾根日帰り達成効果(自信)というものであろうか?

黒戸尾根日帰りに挑む!(甲斐駒ケ岳) [登山]

烏帽子岳へのブナ立尾根(標高差1357m)、谷川岳への西黒尾根(標高差1303m)と並んで日本三大急登の1角に名を連ねる甲斐駒ヶ岳への黒戸尾根(標高差2197m)は、その圧倒的な標高差から三大急登の中では一番厳しいことに異論はないだろう。

コースタイムが15時間以上の黒戸尾根を日帰りで往復するためには、トレイルランナーの方は別として、かなりの健脚者でないと困難だと言われている。

マゾっ気十分のmakiwarikunは、この黒戸尾根で究極の快感におぼれようとチャレンジする機会を伺っていたのであるが、さすがに現時点での体力では、日照時間がもう少し長くないと危険だろうと考えていた。

という訳で、来年夏のチャレンジに向けて体力を付けるべく、筑波山を3往復するなどしてトレーニングに励んでいたのであるが(その時の記事はこちら)、当ブログにご訪問いただいたある超健脚の方から、黒戸尾根に挑戦するなら、黒戸尾根と同じような標高差のあるところを一気に登る練習の方が良いのではというアドバイスを頂戴した。

さすがに的確なアドバイスである。黒戸尾根のように長距離の登りっぱなし&下りっぱなしというのがキツイのであって、たとえ累計標高差が同じになったとしても、登りと下りが交互に現れるのでは遥かに楽に感じる。それに空気が薄くなる2000mを越える高所での行動は、低山での行動より数倍苦しいというのも経験済みである。つまり、楽なことをしていてもトレーニングにはならないということだ。

その超健脚の方からは冗談交じりで「いっそのこと黒戸尾根で練習するとか(苦笑)」と追記していただいたのであるが、そのアドバイスにmakiwarikunはピンと来るものがあった。

「そうだ!行けるとこまで行って、無理そうならその時点で戻ればいいのだ。来年の本チャンに向けて偵察しておくのも悪くない。」と判断して、黒戸尾根に挑むことにしたのだった。

そこでコースタイム(「ヤマケイアルペンガイド10.南アルプス(山と渓谷社)」による)15時間10分のところを10時間40分でクリアすれば、朝6時から歩き始めても暗くなる前に戻れる筈だという計画を立てた。

果たして、この無謀な挑戦からmakiwarikunは無事に生還できるのか!(この記事を書いてる時点で無事に生還してるのだけどね)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

来夏の本チャンに向けての偵察と言いながら、この日のmakiwarikunは久々の本気モードである。本気モードというのは、目標時間内での完走(走ってないけど)のみを目的として、その達成の為にあらゆる手段を講じて全力を尽くすことを指しているが、6月に丹沢主稜縦走を果たして以来のことになる。(その時の記事はこちら

ハイドレーションシステム+高機能Tシャツ+メッシュトレッキングベストといういでたちが本気モードの証である。ハイドレーションシステムは、スポーツ飲料などの中身が温かくなってしまうのが嫌で最近はほとんど使わなくなってしまったのだが、水分補給をこまめに効率良く行う為に久しぶりに引っ張り出した。トレッキングベストは、多くのポケットが付いており、地図やカメラやGPSやタオルや行動食(カロリーメイトなど)を山のように入れられるので、非常に便利である。Tシャツは、この時期の山ではかなり寒いと思われるが、一生懸命歩けばすぐに汗だくになる筈だと考えた。
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ハイドレーションシステム

このようにピークハントのみを目的としたような慌しい山登りに対しては、批判的な見解を持たれる方も多いとは思われるが、自分の場合「今日は山をのんびりと楽しむぞ![いい気分(温泉)]」といった心構えの時には不思議なことにかえってバテバテになってしまうのである。登山という行為自体にかなりの気合が必要なのではないかと思っている。

前置きが異常に長くなってしまったが、自宅を2時半に出たmakiwarikunは、エコドライブモードでのんびりと中央自動車道を走り、尾白川渓谷駐車場には、ほぼ予定通りの5時50分頃に到着した。80台ほどは止められそうな駐車場には、まだ20台くらいの車しか止められていなかった。昨今の登山ブームと紅葉の季節ということで、もっと多く来ているのではないかと思っていたのだが、このハードな登山コースが近年は敬遠されがちという噂はどうやら本当のようだ。
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尾白川渓谷駐車場(5:55 4分の1程度が埋まっていた。)


駐車場の奥から伸びる道を竹宇駒ヶ岳神社に向かうが、神社の裏手にある吊り橋を渡ったところが登山口になっている。
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登山口に掛かる吊り橋(6:01)


登山道は最初、雑木林の急斜面をジグザグに登る十二曲りと呼ばれる場所に入るが、やがて傾斜が緩くなる。その後も登山道は急になったり緩くなったりするのであるが、急斜面が続く谷川岳の西黒尾根に比べると随分と楽に感じた。また、道自体も落ち葉が堆積しているためにフワフワ感があり、膝への衝撃が軽減されるようで、歩いていて気持ちが良かった。このあたり、「黒戸尾根、恐れるに足らず![パンチ]」と早くも強気ムードであった。
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歩き易い平坦部分の登山道(15:40 帰路に撮影)


出発から76分後、笹の平と呼ばれる横手登山口からの道と合流する地点に到着した。 途中で、前方を足早に逃げる(?)ベテラン登山者を必死で追ったせいか、非常に良いペースで来ている(コースタイムは150分)。気合が入った時のmakiwarikunは、ドッグレースの競争犬が兎の模型を追うように、前方の獲物を決して逃しはしない。しかし、この道は追うべき獲物が少なすぎる。ここまで追い抜いたパーティはたったの3組だけだ。(7:12)
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笹の平(7:12)


次のチェックポイントである刀利天狗の手前に、刃渡りと呼ばれる岩場が現れる。その名の通り、刃物のように鋭く切れた一枚岩であるが、クサリが付けられているのでそれほど苦労することなく越えられた。
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鋭い一枚岩の刃渡り(8:04 クサリが付けられているため難易度は低い)


次のチェックポイントである刀利天狗には、笹の平から67分後(コースタイムは120分)に到着したが、ここまでは非常に順調に来ている。(むしろ少し早すぎるかもしれない。)

刀利天狗には、石碑や祠が安置されているが、黒戸尾根は山岳信仰の面影が強く残っており、ここ以外にも多くの場所で石碑や祠や鉄剣などを目にすることができる。
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刀利天狗(8:19)


登山道は、この道の由来となっている黒戸山の尾根北側の樹林帯を進んでいくが、せっかく頑張って稼いだ高度なのに100m程も下って五合目小屋跡に到着する。この時点で到着目標時刻から50分ほどの貯金が出来ていたので「この勝負もらった![手(チョキ)]」とすっかり楽勝ムードであった。(8:51)
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六合目ピークの紅葉(8:50)

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五合目小屋跡(8:51)


ところが黒戸尾根の怖さはこの先にあったのだ。五合目小屋跡の右手には六合目ピークに向かう長いハシゴが掛かっているが、ここからハシゴとクサリ場の連発が始まる。
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長いハシゴ(8:53)


やがて七丈小屋に到着した。黒戸尾根上にある唯一の山小屋なので、ここで甲斐駒ヶ岳の山バッチが購入できるのではないかと思ったのだが、残念ながら置いてなかった[バッド(下向き矢印)]。(9:32)
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七丈小屋(9:32)


実は、道迷いの名人であるmakiwarikunは七丈小屋から八合目御来迎場に向かう途中でまたしても道を失ってしまった[たらーっ(汗)]。ある場所で登山道が見つからずにウロウロしていたのだが、ほとんど崖のような急斜面に誰かが進んだ痕跡を見つけ、そこを登るべきかどうかで悩んでいたのだ。かろうじて、先月に槍ヶ岳へ向かう途中で誤った急斜面を登ったことにより撤退せざるを得なくなった時の事を思い出し(その時の記事はこちら)、そこが正しいルートであるという確信が持てない限りは動かないことにしたのだが、これは正しい判断であった。結局、その急斜面は登山道ではなく、しばらくして運良く下から登ってこられたトレイルランナーらしき人に付いて行き、事なきを得たのであるが、危ないところであった。

八合目御来迎場のシンボルである石の大鳥居は無残にも倒壊していたが、石碑の奥に甲斐駒ヶ岳の山頂を眺めることができた。(10:27)
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八合目御来迎場(10:27 石の大鳥居の残骸の奥には甲斐駒ヶ岳が見える)


八合目御来迎場を過ぎると、またしてもクサリ場の連発である。

まずはコレ。花崗岩の岩壁が足型にえぐれている。どれだけ多くの登山者がここを通過したのだろうかと思うが、この窪みが丁度よい足場になるので、意外に登りやすかった。
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クサリ場①(10:34 花崗岩が足型にえぐれている)


そのすぐ上のクサリ場がコレ。これを目にした途端、これは油断ならないと察知した。ストックをザックに装着して、ここで初めて両手をフリーにした。写真ではイマイチこのデンジャラスさが伝わらないのであるが、ここは足場が高いので、両手でクサリを思いっきりつかみ、体をグイッと引き上げなければならないのだ。もし誤って落ちた場合は、先程のクサリ場の高さも合わせて落下してしまうので命の保障はない。クサリ場の脇にはペットボトルのお茶が置かれていたので、滑落して亡くなった人へのお供え物かもしれないなぁと思ったりして…。まぁ実際に登ってみるとそれほど苦労はしなかったのであるが、単独の女性が思いザックを担いでいる場合は相当に苦労するのではないだろうか。場所によっては、足場もしっかりしているのにどうしてここにクサリを付けてるの?と思う過剰サービスのクサリ場もあるくらいなので、ここはハシゴを付けるべきだと思うのだが…
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クサリ場②(10:37 このクサリ場が一番危ないと感じた)

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過剰サービスのクサリ場(13:19 帰路に撮影)


その後は巨石の間をクサリを頼りに登って行くのであるが、三点支持を心掛ければそれほど苦労することはない。
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クサリ場③(10:49 巨石の間をクサリを頼りに登っていく)


そして有名な二剣岩とも同じ高さにまで登ってきた。ここまで来れば山頂は目と鼻の先だが、この辺りはさすがに辛くて、5分登っては息を整えるために休むといった感じだった。やはり3000mに近い高所での行動は、空気が薄い分、筑波山のようには行かない。
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二剣岩(11:00 山頂まであと一息)


黒戸尾根はまず駒ヶ岳神社本社が建つ東峰に到達する。甲斐駒ヶ岳(2967m)の山頂はすぐ隣の西峰となる。
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東峰駒ヶ岳神社本社(11:25)


不思議なもので先程までのヘロヘロぶりはどこへやら、山頂を目前にして急に元気が回復したmakiwarikunは、花崗岩の白い登山道を一気に駆け上り、とうとう甲斐駒ヶ岳の山頂に到着した[グッド(上向き矢印)]。広々とした山頂は多くの登山者で賑わっていた。(11:30)
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山頂の祠(11:30)

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山頂標識(11:31)

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山頂だジョー!(力石のパンチを受けたようにフラフラだぜ!)


山頂は360度の大パノラマが広がっている。鳳凰三山の上に鎮座する富士山や北岳と間ノ岳の3000mを越える高峰や南アルプスの女王と呼ばれる仙丈ケ岳や赤岳を盟主とする八ヶ岳連峰などの雄姿が目に飛び込んでくる。
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鳳凰三山と富士山(11:32)

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北岳(手前)~間ノ岳(奥)(11:32)

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仙丈ケ岳(11:33)

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八ヶ岳(11:34)


甲斐駒ヶ岳を黒戸尾根で制覇した喜びもつかの間、暗くなる前に駐車場に戻らねばならないので、そそくさと下山することにした。この時は、登ってきた数々のクサリ場を無事に降りることができるのか不安でいっぱいであった。
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戻る黒戸尾根を見下ろす(12:31)


山頂では到着目標時刻に対して30分程の貯金がまだ残っていたので、いくら時間が掛かってもとにかく慎重に下ることだけを考えていた。この心の余裕が良かったのであろうか、心配だったクサリ場の下りも意外とすんなり通過することができた。

そして、五合目小屋跡まで戻ってきた時、「この先に難所はなかった筈だからもう大丈夫だ![手(チョキ)]」とようやく安心したmakiwarikunは、この日初めて大休止(15分)を取ることにした。そして、座りながら行動食を味わって食べるというささやかな幸せを噛みしめていた。(13:23)

尾白川に掛かる吊り橋まで戻ってきた時に、ついに黒戸尾根日帰りを無事に果たせたことを実感した。日本名水百選に選ばれている尾白川渓谷の清らかな水のようにmakiwarikunの心も達成感に澄み切っていた[ぴかぴか(新しい)]
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尾白川渓谷(16:15 吊り橋から撮影)


そして出発から10時間26分後、暗くなる前に無事駐車場に戻ることができた。(16:22)

駐車場には皇太子徳仁親王が平成2年に黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳に登頂したことの記念碑が建っていた。初日は七丈小屋に泊まり、翌日に甲斐駒ヶ岳と栗沢山に登り、三日目に仙丈ケ岳に登ったということだ。20年前だから皇太子が30歳の時の事で、雅子様との結婚を秘かに考えていた頃の事だと思われる。それにしても皇太子さんって意外に健脚なのね(makiwarikunには負けるけどね)。皇居の中にトレーニングジムみたいな施設があるのかなぁ?
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皇太子登頂記念碑(16:32)

この日のコースタイム等は以下の通り

日程:2010年10月16日(日帰り)

天候:晴れ[晴れ]

コースタイム:
5:56 尾白川渓谷駐車場 →7:12 笹の平 →8:19 刀利天狗 →8:51 五合目小屋跡 →9:32 七丈小屋(5分休憩)→10:27 八合目御来迎場(5分休憩) →11:30 甲斐駒ヶ岳山頂(10分休憩) →12:19 八合目御来迎場 →12:46 七丈小屋(5分休憩) →13:23 五合目小屋跡(15分休憩) →14:10 刀利天狗 →15:07 笹の平 →16:22 尾白川渓谷駐車場

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直線距離:17.276km
沿面距離:18.634km
累積標高(+):2715m
累積標高(-):2715m
行動時間:10時間26分(休憩時間含む)

黒戸尾根地図.JPG

黒戸尾根グラフ.JPG

【感想】
・黒戸尾根の前半は歩き易い雰囲気の良い樹林帯の中を進み、後半はクサリ場やハシゴを乗り越えていく、変化に富んだ素晴らしいコースだと思った。登山者が少ないところも自分好みなので、来年もまたチャレンジしてみたい。

・この季節の日帰りは日が短いので厳しいかと思っていたが、涼しいので逆にこの季節だからこそ日帰りがやり易いのかもしれない。梅雨入り前は雪が残っているだろうし、夏は暑くて大変だと思う。

・黒戸尾根を日帰りしているようなオーラが出ていたのか、この日は良く話しかけられた。それだけ多くの登山者が黒戸尾根日帰りを狙いながら躊躇しているのかなぁ?と思った。

筑波山マイナーコース(裏筑波&薬王院コース) [登山]

前回の記事の通り、10月9日に約半年ぶりにホームマウンテンである筑波山に登ってきた。山の南側は、麓にある筑波山神社やつつじヶ丘の周辺にホテルやみやげ物屋が建ち並んでおり、その賑やかさから一般的に「表筑波」と呼ばれるが、表筑波の登山コース(御幸ヶ原コース、白雲橋コース、迎場コース、おたつ石コース)を十分に堪能することができた。

この半年というもの、北アルプスや八ヶ岳や谷川岳といった名峰に心を奪われ、地元の筑波山には目もくれなかったmakiwarikun であるが、久しぶりに足を運んでみると、やはり自宅から近いというのはありがたいものだと改めて思った。まず、それほど早起きしなくても良いし、渋滞に巻き込まれる事もなく車の運転が楽だし、高速道路料金が掛からない上にガソリン代も安く済むしと良いことずくめである。

もちろん、北アルプスや八ヶ岳などの名峰には、早起きをして高速を飛ばして行くだけの価値があるからそうするのだが、これも毎週となるとさすがに疲れるものだ(財政的にも厳しい)。

という訳で、少々お疲れ気味のmakiwarikun は2日前に筑波山を”表(南)”から攻めたばかりであるが、3連休の最終日である10月11日に、今度は”裏(北)”と”横(西)”から攻めることにしたのだった。

日程:2010年10月11日(日帰り)
天候:晴れ
コースタイム:
5:47 駐車スペース →6:35 筑波高原キャンプ場 →7:12 女体山山頂 →7:40 筑波高原キャンプ場(5分休憩) →8:17 駐車スペース (車で移動)
8:36 薬王院駐車場 →8:43 登山口→9:39 自然研究路→9:46 御幸ヶ原 →9:55 男体山山頂 →10:47 薬王院(5分休憩)→10:56 薬王院駐車場

直線距離:14.110km
沿面距離:14.801km
累積標高(+):1696m
累積標高(-):1692m
所要時間:4時間50分

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GPSトラックデータ

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裏筑波コース GPSデータグラフ表示

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薬王院コース GPSデータグラフ表示

筑波山への数多い登山道の中で、私の一番のお気に入りは、北側の斜面を登り筑波高原キャンプ場を経て女体山山頂脇に至る「裏筑波コース」と呼ばれるものである。

登山口は湯袋峠から真壁町方面へ1kmほど下ったところにあり、2万5千分の1の地図上では、標高187m地点のすぐ南側に当たる。

登山口から100mほど下ったところにある駐車スペースに愛車「まきわり号」を止め、5時47分にスタートした。
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裏筑波コース 駐車スペース(5:47 2台のみ駐車可)

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裏筑波コース登山口脇の道標(5:52)

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裏筑波コース登山口(5:52 橋を渡り登山道が始まる)


筑波山への数多くのコースの中から、私がこのコースを最も好きな一番目の理由は、他のコースに比べて圧倒的に登山者が少ないことである。なぜなら、この登山口は交通の便が悪いので車で来るしかないが、周辺には駐車スペースが少ないので多くの登山者がこのコースを使うことは有り得ないからだ。自分のペースで静かな山歩きを楽しみたいmakiwarikunは、どんなに素晴らしい登山道であっても人混みで渋滞するような場所には行きたくないと思っている。

次に、このコースが好きな二番目の理由であるが、登山口から筑波高原キャンプ場までの道の雰囲気が素晴らしいことが挙げられる。なだらかな渓流沿いの登山道を歩くのはとても気持ちが良い。この1年間、様々な登山道を歩いてきたmakiwarikunであるが、今でもここを歩くのが一番好きだ。
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裏筑波コース登山道(5:53 渓流沿いの登山道が始まる)

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裏筑波コース登山道(6:12 気持ちのよい渓流沿いの登山道が続く)


道の途中には「ハコネサンショウウオ」や「サワガニ」や「スギ」や「ヒノキ」などの筑波に生息する動植物の解説板が所々にあり退屈しない。途中、休憩できるベンチも2箇所あるので、体が暖まった頃に上着を脱ぐのにも、水分を補給するのにも便利である。
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スギの説明版(6:19 他にハコネサンショウウオ、サワガニ、ヒノキの説明版)


登山口から40分程度で林道に突き当たるが、そこを右折して5分程度歩いた場所が「筑波高原キャンプ場」である。このキャンプ場には、昨年の9月に燧ヶ岳にテントを担いで初登山した際の予行演習として訪れたことがあるが、幕営料が310円と格安なのが嬉しかった。トイレも水洗でとても綺麗だ。

「筑波高原キャンプ場」はこのコースのほぼ中間地点、標高500m程の場所にあり、このキャンプ場の駐車場までは車で登ってくることも可能であるが、せっかくここまでの素晴らしい登山道をパスすることはないだろう。(しかも車道はかなりの悪路である。)

登山道はこのキャンプ場のどまん中を突っ切るように続いている。
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筑波高原キャンプ場(6:35 この日はテントが全く張られていなかった)

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テントサイト(6:38 三段あるテントサイトのうち一段目 奥はトイレ)

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テントサイトからの景観(6:40)


筑波高原キャンプ場から女体山山頂までは、ひたすら木々の間を登って行くのであるが、道幅が広い上に、岩場や木の根がむき出しになっている場所もなく非常に快適な歩みが続く。コース全般を通して大変歩き易く、転んだりケガをする心配がほとんど無いという事がこのコースを好きな三番目の理由である。(反面、難易度が低すぎて登山の練習にはあまり役立たない。)
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裏筑波コース登山道(6:52 道幅が広く歩き易い)


そして、登山口から約1時間20分後、女体山山頂脇に到着した。(7:10)
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女体山山頂脇の案内板(7:10)

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女体山山頂(7:12)

女体山山頂は残念ながらガスがかかっており、見晴らしが利かなかったので、さっさと下山したが、所々で走りながら急いだ結果、山頂から約1時間後に車に戻ることができた。(8:17)

車で約20分移動し、次の登山口がある薬王院の駐車場に到着した。(8:36)

今回はここまで車で登ってきたが、もう少しハードな山登りを楽しみたい時は、この下にあるつくし湖の駐車場に車を停め、ふるさとの森を抜けてここまで登ることもできる。
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薬王院駐車場(8:36 ふるさとの森を抜けて徒歩でここまで登ることも可能)

登山口は薬王院の境内を横切り、墓地の裏手を抜けたあたりから始まる。(8:43)
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薬王院(8:39)

このコースの登山道は、総じて一人が通れる程の幅しかなく、見晴らしが利く場所も一息つくためのベンチも全くないので、ひたすら黙々と登って行くしかない。但し、登山道そのものは大きな石も木の根もなく非常に歩き易いと感じた。(登山者も表筑波の各コースに比べると非常に少ない。)
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薬王院コース登山道(8:58)


イマイチ楽しくないなぁと思っていたところ、途中で次のようなダジャレ系教訓を見つけた。(9:04)

「山を汚す登山者に蛙たちも呆れ返る 空缶・ゴミ・良心は持ちかえろうね」
筑波山と言えばガマの油で有名なので、蛙に引っ掛けたこのダジャレを作ったのであろうか?

しかし、この教訓の最後に書かれている「良心は持ちかえろうね」というところは私の感性では少々違和感を覚える。私なら「思い出は持ちかえろうね」などとしてサラリと流すところである。空缶などを捨て山を汚す輩は良心など最初から持ち合わせていないのではないか?とか、だからこそ山で良心を拾えと言ってるのか?とか何を言わんとしているのか、しばし頭をひねって考え込んだ。

結局、私の結論は、空缶などを捨てることは良心をも捨てることになるので、両方を持ち帰ることで山を汚さないようにしよう!と訴えているのだと解釈した。小学生の頃から国語は苦手にしてきたので、こういう深い教訓は理解するまでに時間が掛かる。(この解釈が正しいかどうかも不明である。)
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ダジャレ系教訓?(9:04)


やがて、このコース名物の長い丸太階段が始まる。登っても登っても階段が続くので少々うんざりするが、階段トレーニングと思えばさほど苦にならない。いったい何段あるのか気になったので戻る際に数えながら降りたが、約800段あった。

私は時々110段の階段を20往復するトレーニングを行っているので、800段の階段なら大したことはない筈なのだが、この階段は段差が大きい箇所が多いので、体感的にはこちらの方がかなりきつく感じた。
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長い階段(9:19)


長い階段が終わると、傾斜の緩やかな気持ちの良い道になるが、やがて自然研究路にぶち当たる。男体山に直登するならば右折するところであるが、自然研究路を一周するために左折し、御幸ヶ原に向かった。(9:39)

この3連休の最終日、やっと天気が良くなったせいか、2日前とはうってかわって御幸ヶ原は多くの登山者&観光客で賑わっていた。(9:46)
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御幸ヶ原(9:46)

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御幸ヶ原からの景観(9:46)


男体山山頂は御幸ヶ原から10分ほど岩場を登ったところにあるが、この日の人出の多さから山頂直下は渋滞していた。(9:55)
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男体山山頂(9:55)

山頂からは再び自然研究路に入り、薬王院コースへの分岐点へ向かう。そして同じコースを引き返し、山頂から約1時間後に薬王院駐車場に到着した。(10:56)

【感想】
・行動時間が5時間に満たないにも係わらず、移動距離が14kmを越え標高差約1700mを往復したということは、私としては非常に速いペースで歩いたことになる。両コースとも非常に歩き易く、下りでは走れるほどであったことを如実に示している。

・2往復目の薬王院コースの下りで走れたということは、1年前に比べると見違える程に体力が付いているということだと思われる。これなら甲斐駒ヶ岳を黒戸尾根日帰りピストンで制覇できるかもしれない?

雨の筑波山を堪能せよ(筑波山) [登山]

私はなぜ山に登るのか?

おいおい、またmakiwarikun得意のSMネタかい?と当ブログの常連様は思われたかもしれないが、予想を裏切って今回は真面目に書かせていただくので、しばしお付き合いいただきたい。(いつも真面目に書けよ!)

まず、山に登るようになったきっかけであるが、昨年の4月に発症した頚椎椎間板ヘルニア(その時の記事はこちら)により週末(土・日)に練習していたバドミントンができなくなってしまったことが挙げられる。有り余る体力を持て余したmakiwarikunは、なかなか回復しない症状の前にして遂に山に登ることを決意する。

では、なぜ山に登りたかったかというと、持病の痛風に苦しんでいたmakiwarikunはその予防のために昨年の2月からウォーキングを続けていたのであるが(その時の記事はこちら)、その頃(2009年7月頃)から歩くこと自体が楽しいと感じ始めていた。街中でもこれだけ気持ちが良いのだから、空気の美味しい大自然の中を歩けばさぞかし気持ちが良いだろうと思ったのだ。

つまりmakiwarikunにとって山に登る行為は、最初はウォーキングの延長であり、バドミントンの代替であったということだ。ということは、もしmakiwarikunが痛風か頚椎椎間板ヘルニアのどちらか1つにもかかっていない場合には、この素晴らしい世界に踏み込むこともなかった筈である。

痛風さん、ヘルニアさん、僕にかかってくれてどうもありがとう!(んっ?なんか違うような…)

山に登ることを決めたmakiwarikunは、登山関係の書籍を読み漁るとともに道具を買い揃えて準備を進め、2009年9月に尾瀬の燧ケ岳に初登山を果たすことになる。(この時にはまだブログを始めていなかったので記事は無し。)

その後、筑波山をホームマウンテンとしてそこで練習&トレーニングを重ね、少しずつ難易度の高い山に登るようになったのはブログで紹介している通りであるが、今ではどっぷりと山の世界にはまってしまい、毎週のように山登りを楽しんでいるmakiwarikunである。

そして今、山に登る理由を聞かれれば次のようなところだろうか。
・山に登ること自体が楽しい。特にクサリ場のような少しスリルのある場所を通過するのがたまらない。
・下界では決して見ることができない雄大な景色を楽しむことができる。
・苦しい思いをして頂上に立った時の達成感がたまらない。(言い換えれば「私がマゾだから」ということか?)
・心身の健康に良い。(実際、登山を始めて以来、痛風発作に襲われる事が驚くほど減った。)
・ブログのネタ作り。
・人生の目標としての百名山制覇&山バッチ収集。

さて今週末、体育の日を含む三連休である。山に登るには絶好の季節であるが、どこに行こうか?ところが天気予報では土曜(9日)の午後から雨になりそうだと言っている。せっかく遠出して山に行っても、雨に降られては景色は白一色だろうし山行を楽しめないであろう。

そこで今回は、山に登る理由として上に掲げたどれにも当らないトレーニングを目的としてホームマウンテンである筑波山に登ることにした。

日程:2010年10月9日(日帰り)
天候:雨
コースタイム:
5:37 市営第一駐車場 →5:50 御幸ヶ原コース登山口 →6:35 御幸ヶ原→7:13 弁慶茶屋跡 →7:33 つつじヶ丘(迎場コース入口)→7:57 酒迎場分岐(白雲橋コース合流)→8:40 弁慶茶屋跡→9:02 女体山山頂→9:12 御幸ヶ原 →10:15 筑波山神社 →10:26 白雲橋コース登山口 →11:04 つつじヶ丘(おたつ石コース登山口)→11:27 弁慶茶屋跡 →12:17 筑波山神社 →12:31 市営第一駐車場

直線距離:16.249km
沿面距離:16.954km
累積標高(+):1908m
累積標高(-):1910m
所要時間:6時間54分


筑波山地図.JPG
GPSトラックデータ

筑波山グラフ.JPG
GPSデータグラフ表示


筑波山は標高差が700mに満たない低山なので、1往復したくらいではトレーニングにならない。そこで筑波山をおよそ3往復する次のような計画を立てた。

1.御幸ヶ原コースで登る
2.白雲橋コース(弁慶茶屋跡まで)→おたつ石コース(つつじヶ丘まで)→迎場コースで下る(酒迎場分岐まで)
3.白雲橋コースで登る
4.御幸ヶ原コースで下る
5.白雲橋コース(酒迎場分岐まで)→迎場コース→おたつ石コースで登る(弁慶茶屋跡まで)
6.白雲橋コースで下る

う~ん、ハードそうだ。大丈夫かmakiwarikun?
筑波山コース.JPG
筑波山登山コース概略図 

5時35分、無料の市営第一駐車場に到着する。ここから先の駐車場は有料になる筈なので、倹約をモットーとする(決してケチということではない)makiwarikunは、いつもの通りここから登山口までおよそ10分の道を歩く。既に細かい雨が降り出しており気分的にも暗雲が漂う。
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市営第一駐車場(12:31 帰る際に撮影。この日は雨のせいかガラガラだった。)

5時50分、御幸ヶ原コース登山口から登り始める。御幸ヶ原コースは男体山方面に直登するコースであり、傾斜はややきついが頑張れば最短時間で山頂に到達することができる。御幸ヶ原までの自己最短記録は50分であるが(コースタイムは90分)、記録更新を目指してノンストップで急ぐ。そして登山口を出てから45分後、御幸ヶ原に到着した。記録更新だ!すごいぞmakiwarikun!次回は是非とも40分を目指したいと思う。
御幸ヶ原0637.JPG
御幸ヶ原(6:37 見晴らしが全く利かない中で誰一人として居なかった)

御幸ヶ原を女体山方面に進み、白雲橋コースで弁慶茶屋跡まで下る。白雲橋コースの女体山直下は滑りやすい岩場であるが、雨により一層スリッピーになっている。ここだけは慎重の上に慎重を重ねてそろそろと下る。
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白雲橋コース下り(6:52 雨でスリッピーな岩場)

白雲橋コースは数々の奇岩が楽しいコースである。(1月3日に白雲橋コースを登った時の記事はこちら
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母の胎内潜り(7:10)

弁慶茶屋跡からはつつじヶ丘に向っておたつ石コースを下る。しかし、おたつ石コースと白雲橋コースが合流するこの場所にお茶屋を建てれば絶対に儲かると思うのであるが、どうして無くしてしまったのであろうか?
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弁慶茶屋跡(7:14)

おたつ石コースは幼稚園の遠足にも使われるほど非常に歩き易い道である。ロープウェイの発着駅であるつつじヶ丘が眼下に見えている。
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つつじヶ丘を見下ろす(7:24)

つつじヶ丘から筑波山神社方向に進む迎場コースは登山道というよりはハイキングコースである。非常に整備されている上に傾斜も極めて緩やかだ。樹林帯の中を快調に進んで行くがとても気持ちが良い。
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つつじヶ丘の迎場コース入口(7:33)

迎場コースは酒迎場分岐で白雲橋コースに合流するが、ここを右折して女体山を目指して登り返す。白雲橋コースの傾斜は御幸ヶ原コースよりはやや緩やかであるが、2往復目の登りにさすがのmakiwarikunもスピードが上がらない。
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酒迎場分岐で白雲橋コースに登り返す(7:57)

結局、酒迎場コースから女体山までは1時間5分かかったのであるが、コースタイムは1時間30分なのでまぁまぁといったところか。すかさず男体山方向に進み御幸ヶ原コースを筑波山神社まで下る。

御幸ヶ原直下は長い階段が整備されており非常に歩き易い。ここに来ると大倉尾根(通称”バカ尾根”)の長い階段を思い出すのであるが、そこに比べるとこちらの方がかなり短い。
御幸ヶ原コース下り0919.JPG
御幸ヶ原コース下りの階段(9:19)

御幸ヶ原コースを下っている時にいつも腹が立つことがある。あの丸太に似せた陶器はなんとかならないものかと思うのだ。というのはあの陶器が非常に滑るので絶対にあの上に足を置いてはならないと思っている。何を大袈裟なと思われるかもしれないが、あの陶器のおかげで過去に2回ほど滑って転んだことがあるからだ。丸太に見せかける手間をかけるくらいなら、滑らないようにする手間をかけて欲しいと思う。
丸太に似せた陶器.JPG
御幸ヶ原コースの丸太に似せた陶器

御幸ヶ原コースの下りは結局1時間ほど掛かってしまった。疲れも多少はあるかと思うが、登りでは45分しか掛からなかったのだ。makiwarikunがいかに下りを苦手にしているかが分かる。

筑波山神社のトイレで用を足し、筑波山神社拝殿の前を横切るようにして白雲橋コース登山口に向かう。
神社1017.JPG
筑波山神社拝殿(10:17 大きな鈴が印象的だ)

筑波山神社の東側の路地を進みいよいよ3往復目の登りである白雲橋コースの登山口に到着する。登山口からは15分ほどで酒迎場分岐に到着するが、ここを右折して迎場コースに入りつつじヶ丘に向かう。
白雲橋コース登山口1026.JPG
白雲橋コース登山口(10:26)

つつじヶ丘からおたつ石コースに入り、この日最後の登りが始まる。疲れていないと言えば嘘になるが、甲斐駒の黒戸尾根の厳しさはこんなもんじゃないと自分自身に喝を入れながら全力で登る。

この時、随分前に付き合っていた彼女とデートした際、つつじヶ丘までドライブしてロープウェイで女体山に登ったことを思い出していた。その時は、登山道を登っている人達を上から見ながら、「みんな元気だなぁ!」と感心していたのであるが、まさかその自分がこともあろうか3回目の登りにその道を使うことになろうとは…

そして、少し前を登っている若者のグループを軽くぶっちぎり、コースタイム40分のところを23分で弁慶茶屋跡に到着した。まだまだ元気じゃないかmakiwarikun!
おたつ石コース1104.JPG
おたつ石コース登山口(11:04)

弁慶茶屋跡からは白雲橋コースを下り筑波山神社に戻るだけである。そして50分後(コースタイムは60分)まだ少し余裕を残しながら筑波山神社に到着した。

最後にmakiwarikun山の会の会員2号でありキノコフリークのT氏のために、迎場コースで見つけた傘の直径が15cmはあろうかという見事なキノコの写真を掲載する。
巨大キノコ.JPG

【感想】
・筑波山は子供でも安心して登ることができる難易度の低い山であるが、雨が降ると滑りやすい箇所が多いので一挙に難易度が上がる。
・白雲橋コースを女体山まで登った際に、気がふっと緩んでしまい濡れた石の階段に足を滑らせて転んでしまった。山での遭難は難易度の高い場所を過ぎてからなんでもない場所で起きる事が多いというのを身をもって痛感した。
・筑波山への登山道はどれも整備されているので非常に歩き易い。同じ標高差を登るにしても、歩き易い登山道と険しい悪路とでは全く疲労度は違ってくる。従って、たとえ筑波山で4往復できたとしても、それをもって黒戸尾根を日帰り往復できるとは限らない。黒戸尾根に挑戦するには更なるトレーニングが必要だと思っている。

厳剛新道で魔の山に登れ(谷川岳) [登山]

人はなぜ山に登るのか?

「山からの景色が綺麗だから」ありふれた答えだ。「そこに山があるから」言い古された言葉だ。私ならこう答える。
「なぜなら私がマゾだから」 と。

このブログでの下品なSMネタは、多くの方から止めるように忠告を受けているのであるが、禁じられれば禁じられるほどやりたくなるのが人間の心理だ。♪♪止めろと言われても~ 今では遅すぎた~♪♪ (古い?)

私は今、秘かにマゾっ気十分の登山コースを狙っている。日本三大急登の中でも一番きついという評判の甲斐駒ヶ岳への黒戸尾根を日帰りでピストンする計画だ。しかしながら、このコースを狙うには今の自分は体力的にも技術的にも未熟である。これは、日が長くなる来年の夏に決行するとして、今の身の丈に合ったマゾっ気コースを考えた時に思い浮かんだのが谷川岳だ。

谷川岳には7月に同じく日本三大急登の一角に名を連ねる西黒尾根から登っているが(その時の記事はこちら)、西黒尾根のすぐ隣にある厳剛(がんごう)新道といういかにもハードそうな響きの登山道が以前から気になっていた。

果たしてmakiwarikunはこのコースで、「ひぃ~!苦しいよ~!でも気持ち良い~!!もっといじめて~!!」という気分が味わえるのか?


日程:2010年10月2日(日帰り)
天候:晴れ
コースタイム:
5:40 谷川岳ロープウェイ駐車場 →6:10 厳剛新道口→7:30 ガレ沢のコル→8:35 トマの耳(1963m)→8:50 オキの耳(1977m)→9:20 ノゾキ(5分休憩)→10:00 肩ノ小屋(5分休憩)→11:00 ガレ沢のコル→12:10 西黒尾根登山口 →12:25 谷川岳ロープウェイ駐車場

直線距離:11.597km
沿面距離:12.363km
累積標高(+):1655m
累積標高(-):1641m
所要時間:6時間45分

谷川岳地図.JPG

谷川岳グラフ.JPG

厳剛新道の登山口はマチガ沢の駐車スペースのすぐ向かい側にある。当初の予定では、まず一ノ倉沢まで行って数多くのクライマーが命を落とした恐ろしい岩場を観てから、マチガ沢まで戻ってくるつもりであったのだが、なんとロープウェイ駅の先で車両通行止めとなっていた。紅葉シーズンの交通規制は10月中旬からだと思っていたのであるが、実際には10月頭からだったようである。一ノ倉沢の見物はまたも次回に持ち越しだ。いきなりの予定変更に先行き悪し!
通行止目.JPG
ロープウェイ駅先の通行止め

仕方ないので、前回同様、谷川岳ロープウェイ駅の駐車場に車を停め、舗装された道を登山道に向けて歩き出す。駐車場には早朝は係員が居ないのであるが、出る際に駐車料金500円を支払うことになっている。(5:40)

30分ほど歩くとマチガ沢に到着するが、看板のすぐ向かい側に厳剛新道の登山口がある。前方には、ヘルメットをザックからぶら下げたクライマー達が一ノ倉沢を目指してゾロゾロ歩いている。どうぞ気をつけて!(6:10)
マチガ沢.JPG
マチガ沢

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厳剛新道登山口

西黒尾根は最初からいきなりの急登であったが、厳剛新道は意外にも緩やかな登りから始まる。マチガ沢のすぐ隣の道なので、川のせせらぎを聞きながら非常に気持ちのよい登りが続く。また、最初の方は登山道そのものが川のようになっている箇所もあり、産卵場所に向かい川をさかのぼる鮭になったような気分が味わえる。
登山道川.JPG
川のような登山道

初めの方は緩やかだった登山道も高度を上げるにつれて傾斜を増してくる。途中、クサリ場とロープ場が1箇所づつあったが、西黒尾根のクサリ場に比べると長さも難易度も低いような感じがした。
厳剛新道のクサリ場.JPG
厳剛新道のクサリ場

厳剛新道の北側には東尾根が平行に走っているが、谷川岳らしいこの岩稜風景が私はとても好きだ。この向こう側に広がる一ノ倉沢の景色を観たかったのになぁ…
東尾根.JPG
東尾根

登山口から1時間20分後、ガレ沢のコルという場所に着いたが、ここで西黒尾根と合流する。従って、厳剛新道はここまでということになるが、「ひぃ~!苦しいよ~!」というほどきつい場所はなかったけれど、景観といい雰囲気といい素晴らしい登山道であった。(7:30)
ガレ沢のコル.JPG
ガレ沢のコル

しかし、本当に厳しいのはガレ沢のコルから先の岩場である。正しいルートを示す黄色いペンキによる目印に沿って進んでいく。岩場によってはツルツルに磨かれており非常に滑り易い箇所もあるので注意を要する。(未熟なmakiwarikunはこの箇所の下りではお尻を付けて滑り台のようにして降りた。)

下から段々とガスが湧き上がってきたが、トマの耳とオキの耳は綺麗に見えている。頂上まであと一息だ!
トマの耳とオキの耳.JPG
トマの耳(左)とオキの耳(中央)

そして出発から約3時間後、トマの耳に到着したが、驚くべきことにいつもは人であふれているこの場所が、誰一人として居ない。ロープウェイの営業時間が7時からなので、天神尾根から来る人が到着できる時間ではまだないし、私よりも先に西黒尾根を登った人はこの先のオキの耳に向かっているのであろう。(8:35)
トマの耳.JPG
トマの耳(1963m)

山頂付近は紅葉が始まっており秋の気配が訪れていた。
トマの耳からオキの耳一ノ倉岳を臨む.JPG
トマの耳からオキの耳(右)と一ノ倉岳(中)と茂倉岳(左)を臨む

一ノ倉沢を下から見ることができなかったので、逆に上から見てやろうと思い、「ノゾキ」という場所に向かう。新田次郎の短編小説の中に、女が「ノゾキ」から男を突き落とす話があったので、その場所を見てみたいという思いもあった。

途中でオキの耳を通過するが、ここでは2人の方が休んでおられた。(8:50)
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オキの耳(1977m)

オキの耳から30分後にノゾキに到着したが、途中で「憶出の碑」と記された遭難碑を見つけた。昭和28年11月に三井銀行の行員がこの辺りで遭難したようである。(9:20)

遭難碑.JPG
遭難碑

「ノゾキ」にはぽっかりと穴が開いていたので、ここから体を入れて下を覗けという事かと思ったが、「クレヨンしんちゃん」の作者の二の舞になりそうで怖かったし服も汚れそうなので、少し右の方から覗くことにした。残念ながらと言うべきか幸いにもと言うべきか、この時はガスにより見通しはあまり良くなかったのでそれほど怖くはなかった。下の方には多くのクライマーが岩登りをしている筈であるが…
ノゾキ.JPG
ノゾキ

ノゾキから下を覗く.JPG
ノゾキから下を覗く

一部とはいえとりあえず一ノ倉沢を見ることができたので、あとは帰るだけである。来た道と同じ道を戻るが、オキの耳あたりからすれ違う人が急に増えてきた。天神尾根からのトップ集団の方々であろう。

前回は、天神尾根から田尻尾根を経由して駐車場まで戻ったのであるが、天神尾根を登ってくる人の多さに内心ウンザリとしていた。真夏でもあれだけ登山者が多かったので、涼しくなった今はもっと多いに違いないと考えたので、今回は下山者が少ない西黒尾根を下ることにした。

ところが肩ノ小屋に寄ってから西黒尾根を下ろうとした時、西黒尾根による下山は初心者には不向きで中級者以上じゃないと厳しいとの警告付の道標が目に入ってきた。自分はまだ技術的には初心者の域は出ていないものの、警告文にはカッコの中に「健脚者向き」とも書かれていたので、健脚という点では中級レベルにあるものと勝手に判断してそのまま進むことにした。(10:05)
中級者以上.JPG
肩の広場の道標

西黒尾根を実際に下ってみて、初心者には下山不向きとしている理由が良く分かった。急斜面は登りよりも下りの方がはるかに怖く感じる。西黒尾根を登った前回は、長いクサリ場も全く苦労することなく恐さも感じなかったのであるが、今回は恐怖感により結構苦労したのである。
西黒尾根のクサリ場.JPG
西黒尾根のクサリ場

燧ケ岳で滑落して以来(その時の記事はこちら)、下り斜面での歩き方を研究した結果、最近は転んでしまう事がめっきり少なくなったmakiwarikunであるが、難易度の高い西黒尾根の下りに疲れてしまったのか、コケのむした石に滑ってしまい、久々に派手な尻もちをついてしまった。

そして出発から6時間45分後、無事(夜になって無事でもなかったことに気付くのであるが…)谷川岳ロープウェイ駐車場に戻ることができた。もう少しガスが少なければ申し分なかったのであるが、それでも非常に気持ちの良い山歩きを楽しむことができた。(12:25)


【感想】
・前回は真夏の炎天下ということもあり非常に苦しく感じた西黒尾根であるが、今回はそれほど苦しく感じた箇所はなく、ほぼノンストップで頂上までたどり着くことができた。気候的に涼しくなったことが大きいとは思うが、多少はスタミナが付いているのかもしれない。

・恐らく派手に尻もちをついてしまった時に痛めたものと思われるが、夜になってから右足首が痛み出した。その影響で、翌日のバドミントンの練習に行けなくなってしまった。日曜が練習日のクラブには2ヶ月以上行っていないので、絶対に行くつもりであったのだが…

八ヶ岳(編笠山、西岳) [登山]

日程:2010年9月26日(日帰り)
天候:晴れ
コースタイム:
6:15 観音平駐車場→6:53 雲海→7:19 押手川→8:13 編笠山(5分休憩)→8:40 青年小屋→9:27 西岳(5分休憩)→10:12 青年小屋→11:00 押手川→11:23 雲海→11:53 観音平駐車場

直線距離:11.172km
沿面距離:11.652km
累積標高(+):1333m
累積標高(-):1333m
所要時間:5時間38分(10分休憩含む)

編笠山地図.JPG

編笠山グラフ.JPG

登山計画.JPG

槍ヶ岳から失意の撤退を余儀なくされたmakiwarikunが立ち直るために登る山は、この夏に楽しい思い出がいっぱい詰まった八ヶ岳がふさわしいと思った。

八ヶ岳とは、一般的に赤岳、阿弥陀岳、横岳、硫黄岳、権現山、編笠山、西岳、峰ノ松目の八峰のことを指すということだが、阿弥陀岳、編笠山、西岳以外の五峰は既に登頂済なので、ここまでくれば残りの三峰も片付けないことには気持ちが悪い。makiwarikunは完璧主義者だ。

という訳で当初はテント泊で阿弥陀岳、編笠山、西岳を一挙に登ってみようかと考えたのであるが、阿弥陀岳が他の二峰から結構離れていることから、これが意外とハードである事が分かった。そこで、とりあえず日帰りで編笠山(2524m)と西岳(2398m)に登ることにしたのである。

ところがいきなり寝坊してしまった。予定では2時に起きて5時には登山口に着くはずであったのだが、眼が覚めた時には既に3時を過ぎていた。急いで着替えてすぐさま出発したが、観音平の駐車場(1560m)に到着したのは、予定より1時間10分後の6時10分であった。

出遅れたせいで40~50台は駐車できそうな駐車場が既に満杯である。仕方がないので10台ほど並んでいた路肩に停めたのであるが、下山後に戻ってきた時には更に100台ほど車が並んでいた。(編笠山って意外に人気があるんだなぁ…)
観音平駐車場.JPG
観音平駐車場

観音平から編笠山までは樹林帯の中の見晴らしの効かない道が続く。総じて大きめの石がゴロゴロしているが、大きな段差を越えるような場所やクサリ場は無いので、登山道としてはまぁ歩き易い部類に入るだろう。(子供や初心者にお勧め!)

1時間15分の出遅れを取り戻そうとmakiwarikunは全力で飛ばす。山頂までの標高差も1000mに満たないことからスタミナ切れの心配はないと読んだ。

登山道.JPG
登山道(大きな石がゴロゴロしている)

途中に「雲海」と呼ばれる場所と「押手川」と呼ばれる場所の2箇所休憩ポイントがあるが、先を急ぐmakiwarikunは当然ノンストップだ。

押手川は編笠山の東斜面を巻いて青年小屋に向かう道の分岐点になっているが、この巻き道は帰りに通るとして、編笠山頂上に向けてガンガン登っていく。
押手川.JPG
押手川

途中で南側の展望が開けている場所があるので、振り返ると南アルプスと富士山のダイナミックな姿が眼に飛び込んできた。台風一過でもう少しスッキリした姿を期待していたのだが、やや霞がかかっていた。
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南アルプス(北岳と甲斐駒ヶ岳あたりかな?)

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富士山(前日に初冠雪したということだが…)

そして出発から約2時間後、編笠山頂上に到着した。標準コースタイムが3時間10分であることからかなりのハイペースである。この時点で朝寝坊した遅れをほぼ挽回したことになるが、秋のゴールデンウィーク(9/18~9/26)の最終日であるこの日の午後は、登り方面の高速道路が相当渋滞すると予想したので、この後もせわしい山行を続けることになる。
編笠山.JPG
編笠山山頂(多くの登山者が眺望を楽しんでいた)

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北アルプス(憧れのまま終わった槍ヶ岳の姿がぁ~!)

編笠山からの下り道は相変わらず巨石がゴロゴロして歩きにくいが眼下に青年小屋が見える。

青年小屋の前は特に大きな石が並んでいるので、日本神話「いなばのしろうさぎ」のうさぎがワニ(サメだったかな?)の背中を飛び移ったように巨石を飛び移って行く。
編笠山から青年小屋.JPG
青年小屋(テント場は広くて気持ち良さそうだ)

青年小屋の入口には、なんと赤ちょうちんがぶら下がっており「遠い飲み屋」と書いてある。青年小屋という割にはオヤジ臭い雰囲気プンプンの山小屋だ。中年小屋と改名した方が雰囲気に合っていると思うが…
青年小屋.JPG
青年小屋(「遠い飲み屋」)

青年小屋から5分ほど歩いた場所に、「乙女の水」と呼ばれるメルヘンチックな水場がある。乙女の水と言うからには、チョロチョロとおしとやかに流れていると思いきや、結構な水量が流れていた。全く喉は渇いていなかったけれど、水場フリークのmakiwarikunとしてはここは飲む一手である。水場に備え付けられていたひしゃくで一口飲んでみたが、冷たくてとても美味しかった。
乙女の水.JPG
乙女の水

青年小屋から西岳への道はとても歩き易かった。この日のコースの中で唯一石がゴロゴロしておらず、アップダウンもほとんど無いので気持ち良くサクサク歩けた。途中ですれ違った人も往復で一人だけだったので、ここでは静かな山歩きを満喫できた。

西岳は青年小屋と標高もほとんど同じなので、あまり山に登ったという感じはしなかったが、山頂からの展望は素晴らしかった。
西岳山頂.JPG
西岳山頂(誰も居なかった)

編笠山と富士山.JPG
西岳から編笠山を臨む(奥には富士山の姿が)

権現岳.JPG
西岳からギボシと権現岳を臨む

赤岳.JPG
西岳から赤岳を臨む

後は急いで登山口まで戻るだけである。途中でmakiwarikunの行動食としては定番のドラ焼きをほおばりながらノンストップで歩き続け、11時53分に無事、観音平駐車場に戻ることができた。(思惑通り帰りの中央自動車道は渋滞発生前に通過することができた (^ ^)v ブイ )

【感想】
・これで八分ノ七ヶ岳に登頂を果たしたことになる。残りは阿弥陀岳であるが、そう遠くない将来に必ず登るつもりでいる。

・青年小屋から押手川までの下りは巨石がゴロゴロしており難易度が高かったのでほとんど標準コースタイム通り時間が掛かってしまった。難易度の高い下り斜面をスムーズに歩けるようになることが今後の課題である。

・makiwarikunとしては珍しくハプニングのない山行となってしまった。それはそれで結構なことであるが、記事にするネタが無いのは辛いものがある(読者も期待はずれであろう)。

憧れの槍ヶ岳は憧れのまま… [登山]

(前回からの続き)

前日、苦労しながらも何とかテント場に到着し、無事テントを張ることができたmakiwarikunであるが、ここからが苦難の連続であった。

まず、頭が痛い。おそらく軽度の高山病になっていたものと思われる。大天井岳への登りではありえないくらいに呼吸が速くなっていたが、体内が酸素不足であったことの証拠であろう。高山病の発症はその日の体調によって左右されるというが、甲武信ヶ岳での疲れが十分に取れていない中で重いザックを標高差1500mほど担ぎ上げたことにより、体力を使い果たしてしまったことも原因かもしれない。そして何よりもまずかったのは、水分補給を控えめにしたことだと思う。水場で補給した2㍑の水を含めて約4㍑の水分を最初に持っていたのであるが、これで2日間は持たせようと考えたのが大間違い。山では喉の渇きを感じる前に少しずつ水分を摂取するのが鉄則である。

次に睡眠不足。軽い高山病の症状でもあるのだが、登山で標高の高い場所に来ると眠れなくなることは珍しくはない。そうでなくても、makiwarikunの場合は、枕が替わるとあまり眠れなくなるタイプである。更に、寒くて仕方なかったことも眠れない原因となった。この時期の北アルプスが寒いことはTerryさんからも聞いていたので、厚手のフリースなどの上半身に着るものは十分に用意していた。しかし、防寒ズボンの用意をしてなかったので下半身がとても寒かった。寝袋の快適使用温度の下限が3℃になっていたので防寒ズボンがなくても問題は無いだろうと考えたのであるが、この快適使用温度ほどあてにならないものはないと思った。という訳でこの日はほとんど眠ることができなかった。

そして高山病と睡眠不足による結果とも言えるのであるが、蓄積した疲労がほとんど回復していないようで、どうにも体がだるい。

こんなボロボロの状態で槍ヶ岳まで行けるのか?という不安はあったが、最悪の場合は山小屋に泊まっても良いし、まぁ行けるところまでは行ってみよう!と寝袋の中で寒さに震えながらぼんやりと考えていた。

テントの中で横になりながら出入口のファスナーを開けると頭上には満天の星空が広がっていた。テント泊を行うには何かと苦労が伴うが、このように大自然と一体になる感覚を味わえることがテント泊の醍醐味なんだと思った。


9月15日(水)

空がうっすらと白んできたので、大天井岳山頂を目指してテントを出る。大天荘から大天井岳山頂までは石がゴロゴロしている10分程度の道である。(4:45)

山頂でご来光を拝もうと20分ほど粘ったが、残念ながら太陽が出てくる辺りの雲が少し厚くて、期待するような光景を見ることができなかった。朝日を受けて赤く輝く槍ヶ岳も見てみたいと思ったのであるが…
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大天井岳山頂から見る朝焼け

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大天井岳山頂

テント場に戻ってくると、既にほとんどのテン泊者の方々が撤収されていたので、makiwarikunも急いでテントを撤収する。その時、ようやく日が差してきたので、朝日を浴びる槍ヶ岳や穂高連峰をカメラに収めたのであるが、既に期待するような赤い朝日ではなくなっていた。
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朝日を浴びる槍ヶ岳

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朝日を浴びる穂高連峰

当初予定より15分遅れで最初の目的地である牛首のコルに建つ大天井ヒュッテを目指して歩き出した。(6:15)

体調に不安を抱えているため、ゆっくりと下り斜面を進んで行ったが、標準コースタイム通りの40分後に大天井ヒュッテに到着することができたので、この調子ならなんとかなりそうだと感じた。(6:55)

そして大天井ヒュッテで大天井岳の山バッチ(500円)と念のために水1㍑(200円)を購入したのだが、この時点ではまだファイト満々であった。

そして西岳を目指して歩き出した…筈であったのであるが、こともあろうかmakiwarikun、ここで進むべき道を間違えてしまう。フラフラと目の前に見えたハシゴを登ってしまったのであるが、実はこのルート、牛首の展望台という場所に向かうものであり、正しくは左に下って行く道を進まなければならなかった。

次の写真の道標は、大天井ヒュッテの前のものであるが、これをじっくり確認しておれば道を間違えるという失態を演じることは無かった筈である。やはり高山病の影響により注意力がやや散漫になっていたようだ。
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大天井ヒュッテ前の道標

道を間違えていることに気付いていないmakiwarikunは、牛首の展望台への急斜面を必死に登っていくが、やや難易度の高い箇所の連続に滑落しないかヒヤヒヤしていた。「表銀座コースと言っても危ない箇所はあるものだなぁ…」と思っていたのであるが、こんな箇所がまだまだ続くのであれば今の自分には手に負えないコースだと感じていた。

そして牛首の展望台に到着してようやく道を間違えたことに気付いたので、来た道を戻ることにする。登りですら相当に怖かったので、慎重の上に慎重を重ねてゆっくりと下って行った。

そしてなんとか大天井ヒュッテまで戻ってきた時には、肉体的にも精神的にもクタクタに疲れ果ててしまっていた。こんな状態ではこの先に現れる西岳の大下りや槍ヶ岳の東鎌尾根を無事に通過できる自信が持てなかったので、この時点で撤退することに決めたのだった。行動時間も当初予定より1時間15分も遅れており、焦りが更なるチョンボを招きかねないとも思った。(7:55)

撤退すると決めたのなら、まっすぐに燕山荘方面に進めば良いのであるが、なんとmakiwarikun、更に道間違いを重ねてしまう。何を思ったのか大天井岳へ登り返してしまったのである。このあたり、もはや冷静な判断力を下せなくなってしまっており、道迷い遭難等をしてしまった人の精神状態に似ていると思う。

大天井ヒュッテから大天荘への道はそれほど難易度の高い道ではないが、それでも斜面の反対側は崖になっており、うっかり滑落してしまえばまず助からない場所もある。落胆により茫然自失状態のmakiwarikunであるが、ここは済んでしまったことは忘れることにして目の前の道に集中することだけを考えた。
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大天井ヒュッテから大天荘への岩道

そして傷心のmakiwarikunを更なる悲劇が襲う。「キュルキュルキュルキュル…」。そうだ忘れかけていた”ヤツ”がやってきたのだ。一気に高まる便意にヤケクソ気味のmakiwarikunは、初”キジ撃ち”をここで経験してやろうかと思った。この時間であれば、どこの山小屋に泊まった人もここを通る事は無い筈だと、この時だけは冷静に計算したのであるが、やはり”キジ撃ち”は山のマナーとして最後の手段であるべきだと思い止まった。道を誤った怪我の功名で、大天荘のトイレは目と鼻の先である。ここは最善を尽くして必死で肛門に神経を集中させ、なんとか大天荘まで頑張り抜くことができた。

後は、登山口までコースタイム5時間の道のりを戻るだけであるが、いくら時間が掛かっても良いので無事に帰ることだけを心掛けた。

為右衛門吊岩と呼ばれる場所に差し掛かった時、岩場に20匹ほどの猿の集団がたむろしているのに気付いた。彼らの野性のカンによりmakiwarikunが弱っていることを察知され、ザックの中の食料を狙われて襲い掛かられたらひとたまりもないなぁと心配していたのであるが、これは杞憂に終わった。(10:00)
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為右衛門吊岩の猿集団(20匹くらいたむろしていた)

大下りの頭に向かって100mほどの斜面を登っている時のこと、プロのカメラマンらしき人(助手らしき若者を従えていた)に写真を撮られてしまった。その時のmakiwarikunはまるで敗残兵が退却しているかの如く、ストックを支えに重い足を引きずりながら必死の形相で進んでいたのであるが、この中年登山家の鬼気迫る姿に芸術家魂をゆさぶる何かを感じたということだろうか。自分としては颯爽と驀進する元気な姿を撮ってほしいと思うのだが、被写体としてはヨロヨロの状態のほうが魅力的なのであろうか?(10:30)

燕山荘から登山口までの合戦尾根を下っている時、合戦小屋を越えたあたりから本降りの雨が落ちてきた。このところ山の神様に好かれており天候はことごとく良かったのであるが、makiwarikunの撤退に山の神様も悲しんでいるのだと思うことにした。

「そんなに悲しむなよ!来年、また来るからな!」

【感想】
・今回の撤退は残念であったが、もしあの状態で突っ込んで行っていたら、無傷で済んだかどうか分からないし、午後からは雨が降ってきたので、おそらく非常に辛い行動になったに違いないと無理やり自分自身を納得させている。このあたりはイソップ物語『キツネとブドウ』に出てくるキツネと同じ考え方である。ブドウの実を取ろうとしたけれど届かなくて、「あれはすっぱいブドウだ」と言ったあのキツネだ。人間というのは何か不満があると、自分にとって楽に思える理由を探すのだそうだ。これを心理学的のは「すっぱいぶどう理論」とも呼ぶらしい。

・自分の今の体力・技量では、テントを担いでの2泊の北アルプス縦走はハードルが高いと感じた。次回、同じコースに挑む際には、山小屋泊で行いたい。

・登山の際に、荷物を出来る限り軽くする事は、体力の消耗を少なくするためにも安全に行動するためにも鉄則であることを再認識した。荷物が多い時のカメラは一眼レフではなくコンデジを持参することにしたい。

・新田次郎の小説の中に、優れた登山家の条件としてどこでも眠ることが挙げられていたと記憶している。自分は登山家ではないし趣味で山に登っているだけであるが、それでも山で眠れないことは日帰り登山以外では厳しい。小説の中で書かれていたように、家でも寝袋の中で寝たり、登山中と同じような条件で眠る練習をすべきであろうか?


2日間のコースタイム等は以下の通り

北アルプス地図.JPG

北アルプスグラフ.JPG

日程:2010年9月14日~15日(テント泊)

天候:9/14:晴れときどき曇り一時雨  9/15:晴れのち曇りのち雨

コースタイム:
9/14 8:05 中房温泉第一駐車場 →8:15 中房・燕岳登山口→9:30 第二ベンチ(10分休憩) →11:00 合戦小屋(10分休憩)→11:50 燕山荘(5分休憩)→12:20 燕岳(5分休憩) →12:40 燕山荘(10分休憩) →13:40 大下りの頭 →15:10 切通岩 →16:05 大天荘

9/15 6:15 大天荘 →6:55 大天井ヒュッテ(牛首のコル) →7:30 牛首の展望台→7:55 大天井ヒュッテ(牛首のコル) →8:40 大天荘(10分休憩) →9:15 切通岩→10:40 大下りの頭→11:30 燕山荘(10分休憩) →12:20 合戦小屋(5分休憩)→13:05 第二ベンチ →13:50 中房・燕岳登山口 →14:00 中房温泉第一駐車場

直線距離:23.221km
沿面距離:24.689km
累積標高(+):3130m
累積標高(-):3130m
行動時間:15時間45分(休憩時間含む)

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